<高校野球愛知大会:愛工大名電3-2東邦>◇29日◇決勝◇岡崎市民球場

 「高校ビッグ3」の一角、愛工大名電の浜田達郎投手(3年)が、同校5年ぶり10度目となる夏の甲子園出場を決めた。愛知大会決勝で東邦に延長11回の接戦の末、競り勝った。0-2の9回に2暴投で追い付くヒヤヒヤの展開だったが、リードした11回に今大会最速の146キロを計測。底知れない潜在能力を印象付け、春夏2季連続の甲子園切符をもぎ取った。

 やはり派手なガッツポーズはなかった。ピンチでも表情ひとつ変えないポーカーフェースが売りの浜田は、激戦を制したマウンド上の歓喜の中心でも、少し笑みを浮かべただけ。さっさと整列を急いだ。「バッターを打ち取ることに真剣だったので、すぐに達成感は沸いてこなかった」。仲間の手による倉野光生監督(53)の胴上げにも加わらず、隣でキャッチボールをしてクールダウン。本番はまだ先、とでも言いたげ。振る舞いも超大物だった。

 試合はヒヤヒヤだった。8回を終え0-2。味方の残る攻撃は9回だけ。土壇場で無死二、三塁のチャンスをつかみ、2暴投で労せず同点となる幸運な展開で命拾い。延長に持ち込み、同11回にようやく勝ち越し。すると、突然浜田にスイッチが入った。

 球数は140球を超えていたが、一気に球速がアップ。1死後、ボールとなった145球目が今大会最速となる146キロをマーク。酷暑の中、登板5試合目。疲れもピークのはずだが、自己最速にあと1キロまで迫るスピードをたたき出した。11回を完投し10安打2失点、奪三振4。3年間身近で接してきた倉野監督を「彼のポテンシャル、潜在能力の高さを見た」と驚かせた。

 目標は単に“甲子園出場”ではなかったという。これも規格外だ。「光星とやりたい。光星ともう1度やれるんだったら、別に甲子園じゃなくても、どこでもいいんで」と明かした。昨秋の神宮大会と今春のセンバツで2度も屈した光星学院(青森)への雪辱しか頭にない。ついに同じ舞台に立つ。やられたままでは終われない。最後の夏、浜田の戦いは、ここからが本番だ。【八反誠】

 ◆愛工大名電

 1912年(大元)創立の私立校。生徒数1779人(うち女子418人)。野球部は55年創部で、部員48人。甲子園は夏10度目、春は9度出場。05年春に中日堂上直を擁し全国制覇。主なOBはヤンキース・イチロー、元西武工藤公康、中日山崎武司ら。所在地は名古屋市千種区若水3の2の12。佐藤忍校長。◆Vへの足跡◆3回戦8-2中部大一4回戦8-5至学館5回戦6-1名古屋国際準々決勝2-1愛知産大工準決勝10-2豊田西決勝3-2東邦