<高校野球南北海道大会:駒大苫小牧2-0函館大有斗>◇20日◇準決勝◇札幌円山

 南北海道の決勝は、駒大苫小牧と北照の顔合わせとなった。6年ぶりの甲子園を狙う駒大苫小牧は、エース石井塁(3年)が函館大有斗打線を4安打完封し、2年ぶりの決勝進出。3年ぶりの春夏連続甲子園を目指す北照も、6回から救援したエース大串和弥(3年)が7回に決勝打を放ち、函館大柏稜を4回無失点に抑えた。史上初となる3季連続同一カードの頂上決戦で両校が雌雄を決する。

 バースデー登板のエースが輝いた。18歳になった駒大苫小牧・石井が、投打で引っぱった。マウンドでは9回4安打無失点で完封。塁に出れば、2度の好走塁で本塁に生還した。「いい誕生日でした」と控えめに喜んだが、チームを2年ぶりの決勝へ導く大活躍だった。

 母からの教えを実践した。5回裏に四球で出塁すると、暴投で一気に三塁まで到達した。三塁側スタンドから見守った母智美さん(53)は「足が速くなっていましたね」と笑った。中学1年の冬、石井は陸上の短距離選手だった母から走り方を教わった。ももを上げて走るために、階段を1段飛ばしで駆け上がったり、常に下だった目線を上へ向けたり…。特訓の効果もあって、足の速さは格段にアップ。今も体に走りの基本が備わっている。

 背番号1をつけるのは、今夏が初めてだ。うれしさより、身が引き締まる思いだった。父淳さん(54)へ電話で報告したが、声のトーンは低い。「背番号は関係ない。みんなのために、やりたい」。そんな思いは、試合で使用するグラブにも表れている。地区予選からずっと、原一朗投手(3年)のものを借り続ける。「みんなで戦おうという思いです」とベンチ入りを逃した同期の思いも背負う。

 前日19日にチームメートからは、一足早く誕生日を祝福された。大好きなケーキも用意された。そんな仲間の気遣いに、最高のプレーでお返しした。2年ぶりの決勝進出。相手は昨秋、今春に続いて北照だ。6年ぶりの聖地へ、駒大苫小牧には頼りになる背番号1がいる。【木下大輔】