<高校野球南北海道大会:北照10-4駒大苫小牧>◇21日◇決勝◇札幌円山

 聖地へ忘れ物を取りに行く-。北照が駒大苫小牧を下し、3年ぶり3度目の甲子園切符をつかんだ。4-4の9回表、代打村上海斗外野手(3年)の中前打から8連打などで6点を奪い、春夏連続出場を決めた。道大会史上初の3季連続同一カードとなった決勝で夏は5戦目で初めて駒大苫小牧に勝利。南北海道125校の頂点に立ったナインが、センバツで果たせなかったベスト8の壁を突き破る。

 大きな壁を、乗り越えた。北照が、夏に1度も勝てなかった駒大苫小牧を撃破した。エース大串がガッツポーズするマウンド付近に、次々と笑顔の仲間が駆け寄った。みんなでつかみ取った3年ぶり3度目の甲子園切符。吉田主将が、チームメートの思いを代弁した。「自分たちのやってきたことを、信じていました」。最後の最後で、底力を発揮した。

 9回表の攻撃前。河上敬也監督(54)は、選手を三塁側ベンチ前に座らせた。「ここで、行こうや」。3年間の練習の成果を発揮するよう、ハッパを掛けた。選手も気負いはなかった。先頭で送られた代打の村上は「ワクワクしながら打席に入りました」。中前打で出塁すると、ヒットパレードが始まった。8者連続の単打などで6点。一気にたたみかけて、これまでの集大成を全員で体現した。

 ひときわ、熱い思いを持っていたのが5番の沢田だった。センバツでは、準々決勝の浦和学院戦で打球を後逸する痛恨の失策を犯した。春は背番号をもらえず、内外野すべてのポジションを練習させられた。それでも、腐ることはなかった。真剣に野球と向き合う姿を、河上監督は見ていた。今夏からメンバーに復帰。大一番では2度のスクイズを含め、バント安打を3本放った。「甲子園でミスしたものは、甲子園で借りを返したい」(沢田)。そんな1人1人の気持ちが、土壇場での集中攻撃に結集した。

 スタンドでは黄色のTシャツを着た控え部員が、大声でメンバーを鼓舞した。これまでTシャツの色は赤だったが、大会前に指揮官が変更を決めた。「このチームの原点だから」。新チームは、苦しいスタートだった。昨夏は準々決勝で、優勝した札幌第一に敗戦。6失策と自滅した。河上監督は基本練習を徹底させ、キャッチボールだけで1時間を費やした。「最悪の雰囲気でしたし、最初は大変だった」と吉田主将。そんな空気を変える意味もあって、当時作られたのが黄色のTシャツだった。「黄色は元気が出るでしょ」と河上監督。明治神宮大会ベスト4、センバツではベスト8と結果を残してきたチームの象徴だ。

 指揮官は「センバツでは忘れ物をしてきた。それを取り返しに行ってきます」と宣言した。狙うは、もちろん深紅の大優勝旗。経験豊富なチームが、満を持して夏の大舞台に臨む。【木下大輔】

 ◆北照

 1901年(明34)小樽商業学校として創立された私立校。48年に現校名となり、98年から共学。普通、スポーツの2コースがあり生徒数235人(女子66人)。野球部は1908年に創部。甲子園は春5度、夏は3度目の出場。部員数73人。主なOBに西武米野智人、長野五輪ジャンプ金メダリストの船木和喜ら。所在地は北海道小樽市最上2の5の1。小玉智校長。◆Vへの足跡◆◇小樽地区大会2回戦10-0倶知安農代表決定戦3-2小樽潮陵◇南北海道大会1回戦10-0北海道大谷室蘭準々決勝3-1北海道栄準決勝5-2函館大柏稜決勝10-4駒大苫小牧