<高校野球秋田大会:秋田商4-3角館>◇23日◇決勝◇秋田県立

 秋田商が角館にサヨナラ勝ちし、2年連続17度目の甲子園出場を決めた。延長15回、7番三浦大貴捕手(3年)が犠飛を放ち、昨夏の決勝に続きサヨナラ勝利を収めた。昨秋、太田直監督(34)から「秋商史上最弱だ」と言われたチームは、1回戦から試合を重ねるごとにレベルアップ。積極的な攻撃で、甲子園8強入りを狙う。

 秋田商が息詰まる熱戦を制し、2年連続で甲子園切符をつかみ取った。延長15回1死満塁。7番三浦が、右翼方向に打ち上げた。1回戦から全6試合先発のエース佐々木泰裕(2年)は、この日も198球を投げきっていた。点が入らなければ引き分け再試合。三塁走者の杉谷汰一主将(3年)は、腹をくくっていた。「泰裕を楽にしたい。行くしかない」。浅い飛球だったが、迷わずスタートを切って本塁を陥れた。試合開始から3時間11分。秋田商の笑顔を、西日が照らしていた。

 「秋商史上、最弱だ」。新チーム始動後、太田監督は言い放った。選手を鼓舞する類いの言葉ではなく「試合にならない試合もあった。それが事実」だった。昨夏の甲子園。16強で敗れ去った教訓から、打ち勝つチームを目指すつもりだったが「初球から振りにいけず、甘い球を見逃していて全然ダメだった」(杉谷)。昨秋県大会も1回戦で散った。

 どん底からはい上がるには、練習しかなかった。冬のある日、2時間バットを振り続けたこともあった。実戦形式の打撃練習を採り入れ、積極的に振りにいくことを意識づけた。今大会は春の実戦でコールド負けした能代松陽、金足農を撃破。2戦とも、送りバント無しの超攻撃的な試合運びで制した。太田監督は自信を持って言う。「想像以上のチーム。1戦1戦、着実に力をつけてる。打線は去年を完全に超えた」。ノーシードから6試合、これまでの苦しみが力に変わっていった。

 仲間のためにも、負けられなかった。大会中、チーム随一の練習量を誇る阿部颯人(3年)が体調を崩して入院。一塁側応援席には、阿部のユニホームが掲げられていた。試合前、選手は固く誓い合った。「54人じゃ終われないぞ。55人で甲子園に行こう」。阿部を甲子園に連れて行く-。4番斉藤悠哉内野手(3年)は「本当に練習するやつ。負けるわけにはいかなかった」と4安打1打点の活躍で応えた。

 甲子園でも、攻め勝つ野球を貫く。この日も、予断を許さない延長に入るまでは送りバントをせずに攻め続けた。一方で、10回以降は4度も先頭打者を出しながら苦戦。太田監督は「反省ばかり。こんな試合をしてたら甲子園では終わる」と手綱を締め直した。厳しい戦いを乗り越え、昨夏届かなかった8強入りを狙う。【今井恵太】

 ◆秋田商

 1920年(大9)創立の市立高。野球部は22年創部。部員55人。生徒数は717人(女子416人)。春は6度出場し、60年に4強。夏は2年連続17度目の出場で、最高成績は8強。OBにヤクルト石川ら。所在地は秋田市新屋勝平台1の1。進藤隆校長。◆Vへの足跡◆1回戦2-0西目2回戦3-0十和田3回戦2-1能代松陽準々決勝11-0秋田西準決勝4-2金足農決勝4-3角館