<高校野球茨城大会:下館工4-0江戸川学園取手>◇6日◇1回戦◇土浦市民

 茨城の「ドクターK」が今夏のノーヒッター全国1号に輝いた。下館工の谷中規彦(のりひこ)投手(3年)が江戸川学園取手戦で9回ノーヒットノーランを達成した。106球を投げて無四球、許した走者は失策と2つの振り逃げによる3人のみ。珍しい1イニング4三振の記録を含む計15個の三振を奪い、プロ5球団のスカウトの前で快投を演じた。

 最後の夏は「茨城のドクターK」らしく、奪三振ショーで開幕した。下館工・谷中は9回もスイスイと6球で締め、無安打無得点を達成。喜びもほどほどに、涼しい表情で整列に加わった。7回に左手中指がつるアクシデントも関係なく、「4回くらいから意識しました。常に同点だと思って、打たせる気はありませんでした」と胸を張った。

 最初から直球勝負で飛ばし、5回までに9奪三振。6回以降はチェンジアップなどで緩急をつけ、的を絞らせなかった。効果的だったのはカットボール。縦のスライダーと見間違うクセ球で、昨年の先輩エースを参考に、今春から投げ始めた。抜群の切れ味に、ワンバウンドにも手を出してくれた8回には、1イニング4奪三振という珍記録。おかげで春県大会で記録した1試合15奪三振の自己ベストに並び、外野への飛球も2本だけ。四位学監督(45)も「大会になると力を発揮できる子ですが、これはすごいな」と舌を巻いた。

 野球では無名校の下館工を選んだ理由は、「就職優先で、野球もできるから」。入学時は120キロ台だった直球が、一冬を越えて開花。課題だった膝の割れをなくすため、スクワット中心のトレーニングを行ったことが功を奏し、2年春には140キロに到達した。この日はDeNA、ヤクルトなど5球団のスカウトも視察に訪れ、「プレッシャーはありますが、自分の力を出せればいい投球ができると思っています」と球場表示で自己最速タイの142キロをマークした。

 春はオリックス井川が水戸商時代にマークした10者連続奪三振の県記録に並び、夏は2年ぶりのノーヒッター(参考記録を除く)に名を連ねた。観戦した父康洋さん(50)も「完璧だった。よくやったと声をかけたい」とたたえた。次は強豪の藤代戦。谷中は「記録にはこだわりません。チームが勝つことが優先です」と夢の甲子園に向かって、その剛腕を振り続ける。【岡崎悠利】<谷中規彦(やなか・のりひこ)アラカルト>

 ◆生まれ

 1996年(平8)6月17日、茨城・桜川市出身。家族は両親と姉2人。

 ◆野球歴

 小3の誕生日にグラブを買ってもらい、翌日から始める。大和ファイターズ、大和中では投手を含むほとんどのポジションを経験。昨夏は中堅手と投手。目標の投手はダルビッシュ(レンジャーズ)。

 ◆趣味

 加藤ミリヤやINFINITY16らのJ-POPを聞くこと。EXILEの「Lovers

 Again」を歌いカラオケで92点を出したことも。

 ◆愛犬

 チワワの「くう」。大の犬好きで、ぜんそく持ちの父の反対を押し切って、母の職場仲間から譲り受けた。

 ◆好物

 焼き肉、しょうが焼き、親子丼。生まれも育ちも茨城だが、納豆は食わず嫌いで食べられない。

 ◆サイズ

 180センチ、67キロ。右投げ右打ち。