<高校野球東東京大会:広尾8-0昭和鉄道>◇10日◇2回戦◇神宮第2

 ドラフトの隠し玉発見!

 と思ったら、パイロット志望でした…。広尾の最速143キロ右腕、舛田崚投手(3年)が、昭和鉄道戦の7回から登板し、1回無失点に抑えた。5球団のスカウトが視察する中、7回コールドの勝利に貢献した。

 三塁側ブルペンで投球練習を終えた舛田が、小走りでマウンドに向かう。8点リードの7回。エースの登場に、スタンドから拍手がわき起こり、ネット裏のスカウト陣は一斉にスピードガンを構えた。

 最後の夏の初戦。力みから、先頭打者に四球を出す。「真っすぐもコントロールできなかったし、抜けたボールもありました」と反省した。それでも後続は3者凡退にきっちりと切る。179センチ、68キロのスラリとした長身。最速143キロ右腕の初戦に、ソフトバンク、ロッテなど5球団が視察に訪れた。この日は135キロ止まりだったが、広島苑田スカウト統括部長は「球の質、腕の振りがいい。天性のものでしょう」と言った。

 東京・渋谷区にある、大都会の都立に現れた隠し玉候補。にわかにざわつく周囲をよそに、試合後の舛田は「飛行機のパイロットが小さい頃からの夢です」と、思わぬ告白を決めた。

 飛行機との出会いは、初めて大阪旅行した小2の時。憧れが、夢に変わったのは中3だ。数学が得意な今は、高校で理系コースを選択し、卒業後は航空学科のある大学への進学を希望する。「安心して試合を任せられるエースのように、安心してもらえるパイロットになりたい」。これが、プロ野球以上に魅力的に感じている夢なのだ。

 大空を飛び回ることを想像しながら、本職の投球ではスプリット、スライダー、カーブ、スラーブ、チェンジアップと多彩な変化球をマスターした。入学時129キロだった直球は、この春143キロまで成長。平日は午前7時10分から、毎日1時間朝練をこなし、地道に成長を続けてきた。

 12年には16強入りするなど、チームは近年力を付ける。異色のエースは「野球をやってきたことが、パイロットにも生きると思います」と全力投球。プロVS航空会社。異例の争奪戦に発展するぐらい、大活躍の夏になれば最高だ。【前田祐輔】

 ◆舛田崚(ますだ・りょう)1997年(平9)2月3日、千葉生まれ。小1から野球を始め、中3から転入した有明中には野球部がなく、バスケットボール部に所属。広尾では2年夏からベンチ入り。好きな投手はヤンキース田中。家族は両親、姉。179センチ、68キロ。右投げ右打ち。