<高校野球山形大会:山形中央5-2酒田南>◇24日◇決勝◇荘銀・日新スタジアム

 山形中央が劇的な逆転勝ちで、4年ぶり2度目の夏の甲子園出場を決めた。0-2で迎えた9回表、打者一巡(10人)で一気に5点を挙げ逆転。夏初先発の191センチの長身エース石川直也(3年)が12奪三振の7安打2失点完投で、酒田南に勝利した。

 山形中央が「甲子園に呼ばれた」。9回表の逆転劇に続き、その裏の幕切れも印象的だった。2死一塁から最終打者を左飛に仕留めたエース石川は、表情を崩さずに本塁に直行。ベンチの選手たちも淡々と整列した。石川は「この優勝も通過点だと思って、夏の甲子園で野球をしたい」と、東北絆枠出場の昨春センバツに続く全国ステージに駒を進めた。

 「甲子園はつかむものでなく、呼ばれるもの。自分たちの野球をすることが大事だ」。選手たちは、庄司秀幸監督(38)の教えを忠実に守った。最後まで諦めず、土壇場に訪れた好機を着実にものにした。打線は8回まで3安打に抑えられていた。だが2点を追う9回表、相手失策を絡めて1死二、三塁から5番青木陸(2年)が三塁線強襲の同点二塁打。さらに5番永井大地(3年)の中前打で一気に形勢を逆転させた。それまで3打席無安打だった永井は「2年生の青木がつないでくれた。延長にはしたくなかった」と3年生の意地を見せた。

 投げては準決勝まで4試合中3試合で救援した石川が今夏初先発。初回と6回に失点したが、「想定内」と動じなかった。「最初は大胆に」と序盤から球場表示では自己最速タイの144キロを連発。1回裏2死からの4者連続を含む12奪三振でチームを勇気づけた。中盤以降は「完投するつもりだったので」と直球から変化球主体にスイッチ。「三振は意識していませんでしたが、フォークが良くて、空振りが取れた」と振り返った。

 昨秋の県大会準々決勝で延長15回引き分け再試合で敗れた相手に雪辱した。だが、ナインは喜びを爆発させることはなかった。相手に対する気づかいを忘れなかった。阿部宏太郎捕手(3年)は「(気持ちが)大きくなると、隙が生まれますから」と言った。山形の過去20年間の夏の大会で、公立校の優勝は山形中央だけ。昨春の甲子園では1勝しているが、まだ夏の甲子園勝利はない。石川は「挑戦者として、自分たちの粘り強い野球を徹底して勝ち進みたい」と全国頂点に挑む。【佐々木雄高】

 ◆山形中央

 1946年(昭21)山形県山形公民中学校として開校。50年現校名になる。86年体育科を新設。生徒数は845人(男子536人)。野球部は53年創部で部員は54人。甲子園は10年春夏連続出場。主なOBは鈴木駿也(ソフトバンク)、スピードスケート加藤条治。所在地は山形市鉄砲町2の10の73。奥山雅信校長。◆Vへの足跡◆2回戦9-1山形南3回戦5-1羽黒準々決勝8-1鶴岡南準決勝5-1鶴岡東決勝5-2酒田南