<全国高校野球選手権:八戸学院光星4-2武修館>◇17日◇2回戦

 八戸学院光星(青森)が初出場の武修館(北北海道)に逆転勝ちした。4回裏に2失策と犠飛で先制されたが、8回表にエース中川優(2年)の左前打から無死満塁とし、森山大樹内野手(3年)の逆転打などで4点を奪って勝負を決めた。中川は甲子園初先発で3安打2失点完投勝利。11年夏から3季連続甲子園凖優勝の実力校が底力を発揮し、目標の全国制覇へスタートを切った。

 八戸学院光星打線が、やっと目を覚ました。0-1の8回。中川が左前打で出塁する。続く北條裕之(3年)に仲井宗基監督(44)からセーフティーバントのサインが出た。それまで3打席無安打。積極的なスイングが影を潜めていた1番打者は「県大会で1度もやっていない」というバントを三塁線にきっちりと転がし、相手の野選を誘った。

 2番足立悠哉(2年)の送りバントが安打になって無死満塁。3番森山の中前2点タイムリーで逆転し、主砲深江大晟(3年)の犠飛、新井勝徳(同)の右前打で一気に4点を奪って勝利を引き寄せた。

 青森大会の準決勝、決勝も逆転勝ち。粘り強さは証明済みだったが、7回まで2安打の内容に「だいぶ焦りました」と新井勝徳。武修館の先発右腕立花翔太(3年)、2番手の左腕山崎永治(2年)にコースを丁寧に突かれて攻めあぐねていた。想定していたのは左の主戦格の徳橋颯野(同)。7回からその徳橋が登板するという幸運な展開も逆転劇につながった。甲子園準優勝3度の仲井監督も「本当に苦しかった…」と冷や汗をかく初戦突破だった。

 打線が湿った分、2年生エース中川が踏ん張った。直球が走り、多彩な変化球が低めに決まる。6回には直球が自己最速を2キロ上回る140キロを記録し「ビックリしました」。6月初めに右手中指の腱(けん)を痛めて1カ月間投げられず、青森大会でもツーシーム、チェンジアップを控えるなど万全でなかったが、「今日が一番良かった」と大舞台にピークを合わせてきた。

 170センチ、80キロで中学時代のあだ名は「おにぎり」。野手で入学したが1年の6月から投手に専念し、抜群の制球力で背番号1を勝ち取った。センバツでは背番号10で2試合に登板したが、エースナンバーを背負って乗り込んだ今回の甲子園では気構えも違う。「県大会では先輩が打って援護してくれたけど、甲子園では自分がカバーしようと思ってました」。中川の成長が、頂点を目指す八戸学院光星を一段と強くする。【高場泉穂】