<全国高校野球選手権:高崎健康福祉大高崎10-0利府>◇18日◇2回戦

 初出場の利府(宮城)が、全力を出し切って散った。「機動破壊」の高崎健康福祉大高崎(群馬)に敗れ、3回戦進出を逃した。初回に4盗塁を許し、犠飛や3安打を絡められて3点を献上。3回以降も失点を重ねた。それでも打線は最後まであきらめず、1点を奪いにいった。1回戦で初陣を飾り、宮城公立校に希望の光をともした。

 0-10の完敗でも、利府ナインを充実感が包んだ。上野幹太主将(3年)が誇らしげに言った。「最後まで自分たちの野球ができた。満足している」。69年の仙台商以来、45年ぶりの宮城公立校2勝は逃したが、2試合連続無失策。穀田長彦監督(45)も、選手と同じ気持ちだった。「点差はついても内容のあるゲームだった」。

 「機動破壊」だけは想像以上だった。高崎健康福祉大高崎に3点を奪われた初回、4盗塁された。先発奈須野聖也(3年)はセットポジションに入る前にけん制し、間合いの取り方で走者のスタートを遅らせようとしたが「相手が上だった」。捕手の小野恵太(2年)も「考えているよりも違った」とバッテリーが舌を巻く。穀田監督も「捕手から投手への返球で(走る)タイミングを計っている」と驚いた。リードを大きく取りながら抜群のスタートを切られ、3回までに9盗塁。大会記録にあと2つに迫る計11個を許した。

 走られても、利府の野球は貫いた。2回1死一塁で7番鈴木祐人(3年)が、スリーバントで走者を二塁へ進めた。バントだけの練習はしない。フリー打撃前に、2球だけ行う。上野主将は「バントを決めないと打撃練習ができない」と、試合での集中力につなげた。7犠打の1回戦から2つに減ったが、追う展開でも1点を取る過程を重視した。

 宮城大会1試合平均5・29個の犠打は、仙台育英や東北などの強豪私立に対抗するため「強いところがやらない野球」(穀田監督)だった。もう1つの特徴、投手継投も甲子園で守り続けた。穀田監督は投手の特徴や試合展開を読んで、スパッと代える。宮城7試合を勝ち抜いた“お家芸”。敗戦ムードでも迷いがなかった。

 1回戦で宮城公立校31年ぶりの夏1勝を手にした。上野主将は「公立でもできることを伝えられたと思う」。3番手で登板した渡辺智也(3年)は、高校で野球を終えるつもりだったが「今すぐはやめられなくなった」と言った。犠打の多用に継投策。利府カラーを前面に押し出して、宮城の新しい野球を甲子園に吹き込んだ。【久野朗】