<全国高校野球選手権:高崎健康福祉大高崎8-3山形中央>◇21日◇3回戦

 山形中央は、高崎健康福祉大高崎(群馬)に敗れ、8強入りを逃した。2回1/3を5失点の先発佐藤僚亮(2年)からマウンドを引き継いだプロ注目右腕石川直也(3年)が、10安打を浴びながら7奪三振3失点と粘り強い投球で、エースの意地を見せた。

 山形中央エース石川に涙はなかった。利府(宮城)戦で11盗塁を記録した高崎健康福祉大高崎に対し、毎回ランナーを出す苦しい展開。いつ走られるか分からないプレッシャーの中でも勝負を楽しんでいた。4、6回と2度、プロ注目の脇本直人(3年)から自慢のストレートで空振り三振を奪った。警戒しても7盗塁を決められ、10安打を浴びたが「全国のいいバッターと対戦できて楽しかった」と充実感をにじませた。

 5回裏1死二、三塁で、空振りをとった直球はこの日最速の146キロを計測した。19日の東海大四(南北海道)では自己最速の148キロをマーク。大会最速右腕となったことも「うれしいこと」だった。春の県大会2回戦で日大山形に敗れた後、石川ら投手陣は五輪銅メダリスト加藤条治を輩出した強豪スケート部の練習に参加。約2週間、スケートの低い姿勢からのジャンプ、登山など厳しい練習をこなした。その下半身強化が夏にかけての球速アップにつながった。13年センバツに続く2度目の甲子園で、納得のいく投球が出来た。

 山形に帰り、すぐ次の目標へ歩き出す。石川は「後輩が何度も戻ってくるように」と、土を持ち帰らなかった。山形の公立校初の2勝を挙げたが、目標の「日本一」に届かず庄司秀幸監督(38)も「めちゃくちゃ悔しいです」と言葉を絞った。横山愛樹(3年)は「1、2、3年生力を合わせて、秋日本一を目指したい」。この日の先発2年生4人を中心としたチームを、3年生がサポートし、秋の神宮大会での優勝を目指す。13年のセンバツで敗れた浦和学院(埼玉)は、2年生エース小島和哉を3年生が支えるチームだった。そういうチームが日本一になる、と教訓にしてきた。

 この日の負けも、無駄にはしない。阿部宏太郎(3年)は「細かい野球をしていた。勝負どころの打撃がすごかった」と勝者をたたえた。「能力はある。後輩たちには細かいところに目を向けて頑張ってほしい」。甲子園でまた1つ教訓をもらい、山形中央は強くなる。【高場泉穂】