<全国高校野球選手権:日本文理6-5富山商>◇21日◇3回戦
富山商が悪夢のサヨナラ負けに涙した。1点リードの9回1死一塁で、2番手の岩城巧投手(3年)が左翼席へ逆転サヨナラとなる2ランを浴びて日本文理(新潟)の前に屈した。エース森田駿哉投手(3年)には涙はなく、岩城をかばった。
サヨナラ負けした富山商のエース森田に涙はなかった。「岩城が打たれなら仕方ないです」。1点リードの9回裏1死一塁、マウンドを託した2番手岩城が逆転のサヨナラ2ランを浴びた。ぼうぜんと左翼席を見つめる岩城に森田は「切磋琢磨(せっさたくま)してきて、あいつがいなかったらこんな投球はできなかった。ありがとう」。泣き崩れた岩城は「森田の背中を見てここまでやってきた」とさらに涙した。
最速146キロ左腕は南部中2年から練習のない日も走り込んで足腰を鍛えた。家では毎日シャドーピッチングを欠かさず、高校入学後も定期的に続けた。富川捕手は「森田は練習も率先してやっているので見習うことが多い」。この日は森田とのバッテリー失策での失点もあった。富川は8回に同点を防いだ本塁阻止の時に左手首を打撲しながら森田、岩城のためにもテーピングしてマスクを再びかぶった。
41年ぶりの8強を逃した。今大会3試合25回4失点(自責2)、防御率0・72の森田は大学へ進学予定。「野球は9回まで何があるか分からない。この悔しさを次の舞台で生かしたい。後輩には僕らより1つでも2つでも上にいってほしい」。思いは聖地のマウンドに残した。【辻敦子】