<センバツ高校野球:天理10-1華陵>◇30日◇3回戦

 華陵(山口)のエース宇野賢士(3年)は一切言い訳をしなかった。ユニホームのポケットの周りには血がついていた。「調子はよかった。自分の力が足りなかった。実力不足です」。ケガのことは口にせず、潔く敗戦を認めた。

 先発のマウンドに上がった直後、水ばんそうこうで固めた右手中指のツメが割れた。出血した。ポケットに入れたロージンバッグを握ろうとしてズボンを血に染めた。速球の抑えが利かず、スライダーも甘く入った。被安打11の8失点。大浪定之監督(48)から2度ツメの状態を聞かれ、5回にはベンチ裏で医師にも診てもらった。そのたびに宇野は「大丈夫です」と言い続けた。

 慶応戦(26日)前の練習で割った。それでも痛みを忘れて完封した。初勝利は挙げたが、ツメは悪化していた。この日は6回途中、120球を投げたところで降板した。「自己管理をしっかりして夏(の甲子園)に戻ってきます」。エースはこう言い切った。