<高校野球埼玉大会>◇28日◇決勝

 埼玉は本庄一が花咲徳栄に3-2でサヨナラ勝ちし、2年ぶり2度目の甲子園を決めた。

 白球が右前に転がると青空に人さし指を突き上げ、谷本充内野手(3年)が笑顔で走りだした。2-2で迎えた9回裏1死一、三塁。カウント2-1から低めのスライダーを、準決勝まで打率2割5分の2番打者がとらえた。守備が得意で打撃は苦手なだけに「田村(和麻投手=3年)につなげればと思っていた。焦りはなく、食らいついていけた」。ベンチに折り鶴で「常笑」を掲げるチームらしく、人生初のサヨナラ打を満面の笑みで振り返った。

 「3年間(応援の)スタンド組でもいいから、本庄一で野球をやりたい」という強い意志を持って入部した。中学時代に所属していた大宮ボーイズ(現・オール春日部ボーイズ)では二塁手の3、4番手。控えを覚悟してまで、通学に1時間30分かかる強豪私立へ進んだ。中2の夏、浦和学院との準決勝を観戦し「楽しそうに野球をやっていた」ことが決め手だった。今春、須長三郎監督(53)が「うちは左(打者)が多くて、右を1人置いておきたいから」とレギュラーに抜てき。しかし、練習試合の打率は1割5分にも満たず、今大会はここまで0打点。「まさか打てると思ってなかった」という谷本の一打が、第1シードを打ち砕いた。

 08年の記念大会で奥田ペドロ内野手(現マリナーズマイナー)らブラジル人留学生を擁し、北埼玉代表として甲子園に初出場した。今回は、レギュラー全員が県内出身。須長監督は「埼玉県人だけで優勝をつかんだのは、うれしい。胸を張って埼玉代表で出られます」と、ノーシードからの快進撃に冗舌だった。【保坂恭子】