<高校野球宮崎大会>◇30日◇決勝

 延岡学園が宮崎一を6-2で破り4年ぶり6度目の甲子園出場を決めた。6回まで2-2の接戦だったが、14安打と好調な打線が終盤に突き放した。宮崎県内で大きな被害を出した口蹄(こうてい)疫の影響で練習試合禁止、大会中止、夏の大会の開幕延期など前例のないさまざまな困難があったが、それを乗り越え延岡学園ナインが頂点に立った。これで九州、山口の代表校がすべて出そろった。

 スタンドからわき起こる大きな手拍子に包まれ、金メダルをかけた延岡学園ナインが閉会式でグラウンドを1周した。無観客試合で幕を開けた大会は準決勝からようやく通常風景に戻った。「甲子園につながる大会をやらせていただいたことに感謝します」。4月に就任したばかりの重本浩司監督(28)から出たのは感謝の言葉だった。

 全員野球で勝利を決めた。序盤に先発坂元悠貴投手(3年)が2失点すると、5回2死二塁から押川龍太内野手(3年)がこの夏、初登板。2回2/3を無失点に抑え再び坂元につないだ。攻撃では4番浜田晃成内野手(2年)が、本塁打が出ればサイクルという4安打で打線を引っ張り、今大会チーム最多の14安打で終盤に宮崎一を突き放した。

 対外試合禁止、公式戦中止という口蹄(こうてい)疫禍の苦しい状況をプラスに変えてきた。決勝までの5試合で失策はわずか1。5月下旬からは週5試合の紅白戦に加え「これでもかというほどノックをしました」と重本監督。多いときは1日3時間ぶっ通しでノックをした。「監督が1人で3時間ずっとノックを打ってくれたんです」と押川主将。ナインには新任の若い監督に「大丈夫かな」という不安もあったが、1人で全員にノックを打つ姿にきずなは深まった。

 さらに紅白戦で控え選手も常に試合に出たことで実力アップ。「おかげでベンチから的確な声が出るようになった」(重本監督)。無観客試合でベンチの声は確実にナインに届いた。前例のない非常事態を乗り越えナインは強く、たくましくなった。「宮崎県53校(出場は51チーム)の分も頑張ります。口蹄疫で苦しんだ人たちに希望と感動を与えるためにまず1勝したい」と押川主将は誓った。延岡学園の甲子園での勝利は、同じ困難を乗り越えた宮崎の球児みんなの勝利でもある。【前田泰子】