<全国高校野球選手権:福井商6-0いなべ総合学園>◇10日◇1回戦

 初出場のいなべ総合学園(三重)にとって「魔の5回」だった。0-0で迎えた5回。そこまで被安打1と好投を続けてきたエース近藤佳史(3年)が集中打を浴びた。打者10人の猛攻に遭い、一挙6失点。「ストレートが甘く入ったところを打たれた。力がなかった」。近藤は自らを責めたが、チグハグな攻撃がエースのリズムを狂わせていた。

 打線は、初回から毎回のように得点圏に走者を置いた。特に、大量失点する直前の5回には、1死満塁の大チャンスをつかんだ。が、4番中園洋輔捕手(3年)が遊ゴロ併殺。前任の四日市工を率いて春夏通算6度の甲子園出場経験を持つ尾崎英也監督(51)は「流れをつかみきれないでいるうちに、相手にいってしまった。これが甲子園」。“あと1本”が出なかった打線を敗因とした。

 甲子園対策は、講じてきた。大観衆で声が聞こえにくいことを想定し、尾崎監督は「感性を豊かにして戦うように」と、身ぶり手ぶりでコミュニケーションをはかるよう徹底。選手を六甲山にも連れて行った。ふもとに向かって吹き下ろす「六甲おろし」を肌で感じさせ、眺めのいい場所から甲子園を見下ろして大舞台への緊張をほぐそうとしたが、実らなかった。

 新チームの大黒柱として期待される3番岡部直人外野手(2年)は「甲子園の厳しさを味わった。出て満足するんじゃなく、勝って満足できるようにしたい」と言った。初黒星を糧に、目標は甲子園出場から1勝に進化。また新たな挑戦が始まる。【八反誠】