<全国高校野球選手権:聖光学院1-0広陵>◇12日◇2回戦

 夏Vの夢が、初戦で散った。広陵(広島)は聖光学院(福島)との初戦を完封負け。優勝候補にも挙げられたが、2年生4番丸子達也内野手が1安打に封じられるなど、打線が5安打と沈黙。右ひじ炎症に悩みながらも4安打1失点完投のエース有原航平投手(3年)を援護できなかった。

 丸子が鬼の形相でほえた。1点を追う8回2死二塁。カウント2-1からの4球目、相手エース歳内の得意球スプリット・フィンガード・ファストボール(SFF)にバットが空を切る。「くそ!」。崩された体勢のまま、手から離れたバットだけが聖地の宙を舞った。「気持ちが前に前に行きすぎた。冷静さを失っていた」。温厚な丸子が感情あらわに悔しがった。

 この回は1番から始まる好打順。先頭福田は左飛も、主将として7球粘った。続く徳田は闘志むき出しの左ひじ死球で出塁。同じ2年の蔵桝は、執念のヘッドスライディングで一ゴロ併殺を逃れた。そして代走・豊田は中井哲之監督(48)の思惑通り二盗に成功。ナイン一丸でつないだ好機の意味が痛いほど伝わった。だからこそ「振らないよう気をつけていた」変化球に手を出した自分が、許せなかった。

 丸子には高いハードルが待ち続ける。90年から指揮を執る中井体制で初の「夏1年生4番」に任命された。「4番丸子」を不安視する周囲の声もあった。

 だが、今春センバツでの弾丸アーチで重圧と雑音を吹き飛ばした。「丸子で勝った試合はない」と自虐気味に繰り返した中井監督も「センバツあたりから丸子で勝つ試合が増えた」と認めた。

 6回2死一、二塁、中前打を放った。だが、聖光学院の中堅手、根本の見事なバックホームで本塁を狙った二塁走者が刺され、先制点を逃した。聖地のタイムリーは“幻”になった。「甲子園では最大限に力を出さなければ打てない。あのヒットだけは最大限に出せた」と言った。指揮官も「丸子があれほど感情を表現したのを見たことはない。闘争心があふれていた証拠で、悪いことではない」と新たな殻を破った4番に手応えを明かした。

 紙一重の勝負に敗れ、3年最後の夏が終わりを告げた。「これからは自分がチームを引っ張っていく」。丸子は創部100周年を迎える自分の代で、悲願の夏優勝を誓った。【佐藤貴洋】