<全国高校野球選手権:関東一11-4遊学館>◇14日◇2回戦

 関東一(東東京)の4番宮下明大内野手(3年)が、2試合連発となる2ランを含む、5打数5安打4打点と爆発した。二塁打を打てばサイクル安打の活躍で、エース左腕、白井慶一投手(3年)の2試合連続完投を援護。11-4と遊学館(石川)に大勝した。東京対決となる3回戦の早実(西東京)戦で、初出場した85年以来の8強進出を目指す。

 関東一・宮下のバットに、天国の父が力を貸した。5点リードの3回無死二塁、フルカウントから外角のスライダーを振り抜いた。低い弾道の打球は、高校通算44号の中越え2ラン。1回戦の佐野日大戦から2試合連発。うれしさのあまり、生還するまでに2度も右手を高く掲げた。

 「お父さんのDNA?

 あると思う。あんな打球、普通のびない。やっぱりなんかあるのかなって」と笑う。この2ランを含め、5打数5安打4打点。二塁打が出ればサイクル安打達成だった。2年前に他界した父正彦さん(享年46)は、元大洋(現横浜)の外野手。大会前の6月には、正彦さんの墓参りに行った。生まれたときには現役を退いていたため、父のプレーは見たことがない。だが譲り受けた高い身体能力で、昨秋の練習試合で2-11と大敗した相手を圧倒した。「サイクル?

 最後の打席の前に気付いて、正直(二塁打)狙ったけどダメでした」と少しだけ残念そうだ。

 1年の秋から4番に座る。しかし、直後に左肩の関節を痛めて手術。苦しい時期を乗り越え、打撃練習では、帝京など好投手がそろう東東京を勝ち抜くために140キロ以上の速球に目を慣らしてきた。大阪入り後に練習した両翼91メートル、中堅112メートルの球場では、ネット越えの強打を見せた。この日応援に駆けつけた母史子さん(46)は「走り方も投げ方も、全部お父さんにそっくり」と成長に目を細める。

 チームは17安打11得点と、1回戦に続いて2ケタ安打と好調だ。85年以来の8強をかけて、3回戦は早実との東京決戦。「東京からは2校出てるんで、東京の1番になりたい」。父の墓前に、新たな勝利を手向けたい。【鎌田良美】