2016希望郷いわて国体が10月1日に開幕する。成年男子の軟式野球(2日開幕、洋野町オーシャンビュースタジアムほか)に出場する「オール岩手」のエース三浦翔太(26=雫石クラブ)は変わった経歴の持ち主だ。岩手大卒業後、11年のドラフトでソフトバンクから育成3位指名を受け入団。14年に退団後、今年4月から盛岡市立仙北中に保健体育の教諭として勤務している。元プロ野球選手から先生に転身した異色のサブマリンが優勝に導く。

 元プロの中学体育教師・三浦が、念願の地元国体での優勝を力強く宣言した。「1試合1試合全力で投げて、目先の試合を勝ちに行きたい。震災があって、岩手県民から力強さ、勇気をもらいました。今度は自分たちの番。スポーツでも粘り強さを見せられれば」。決勝まで5連戦のハード日程を勝ち抜くには三浦のフル回転が絶対条件だ。

 3年間のプロ生活を終え、ソフトバンクを退団した14年末。共通の知人を通じて、岩手県野球協会の佐々木圭総監督(45)から声をかけられた。「地元に戻ったら、国体が開催される。思ってもないチャンスだった」。15年はプロアマ規定で公式戦に出場できず、母校岩手大の臨時講師をしながら練習と採用試験の勉強を両立させた。「スポーツ特別選考」枠に合格し、今年4月から仙北中に赴任した。軟式野球部の顧問を務め、毎週水曜日の全体練習と土日の強化合宿で本番に備えている。

 高1から始めたトレードマークの下手投げは今も健在だ。地上約18センチから投げ込む右腕の振りはプロ当時よりもやや上がり、最速137キロの球威は当時より落ちたものの「プロに入る前からスピードは意識してないです」。軟式球用にアレンジした3種類の変化球を自在に操り、打たせてとる投球が光る。

 三浦だからこそ還元できることがある。「プロで活躍する選手ほど、基本的な練習をおろそかにしませんでした」。堅守で鳴らすソフトバンク今宮健太内野手(25)の自主練習は地味だった。キャンプ中に2時間、転がされた球を黙々と捕球し続ける姿を見てきた。「小学生でもできるような練習が、これほど大事なものかと痛感させられました」。活躍するプロの実態を語った。

 岩手国体開催決定以来、チームを指揮して9年目の佐々木総監督は三浦の存在の大きさを強調する。「戦力としてもデカいですが、プロで培った練習やノウハウをチームに教えてくれたのはプラスになりました」。三浦の本格的な野球活動は今大会が最後になる予定だ。「誘ってもらって感謝しています。仲間に恵まれました。恩返ししたい」。19年にわたる野球人生の集大成を、地元国体優勝で飾る。【高橋洋平】

 ◆三浦翔太(みうら・しょうた)1989年(平元)11月10日、岩手県大槌町生まれ。月ケ丘小3年から軟式野球を始める。滝沢南中時「滝沢いわてシニア」で硬式を始めた。盛岡大付高では1年冬からアンダースローに転向。岩手大では北東北大学リーグ新記録となる通算35勝を挙げた。11年育成ドラフト3位でソフトバンク入りし、14年10月末に退団。177センチ、70キロ。右投げ左打ち。