アンパンチ実らず。広島松山竜平外野手(31)が2-2の8回、阪神3番手高橋から右翼席へ勝ち越しソロを放った。7月7日ヤクルト戦以来、久々に描いたアーチで試合を動かした。直後に今村が打たれてチームは敗戦。マジック点灯は持ち越しとなった。それでも左翼の定位置奪取を狙う大砲の左投手から記録した今季1号は、自身にとってもチームにとっても大きな意味を持つ1発となった。

 夜空に高々と舞い上がった白球は右翼席最前列に吸い込まれた。4回から両軍無得点が続いて、迎えた8回。松山が左腕高橋の137キロ真っすぐをたたいた。大きな放物線を描いたアーチで勝ち越し点をもたらした。「もうちょっと早く打っておけば良かった」。直後に今村が打たれチームは敗戦。7月7日ヤクルト戦以来の7号ソロにも、笑顔はなかった。それでも和製大砲の久々の1発が希望をつないだ。

 左腕からの1発に大きな意味がある。「本当にずっと試合に出してもらっているので左も打たないといけない。ああいう1本は大事。これからもいい内容のものを出していきたい」。チームでもトップクラスの打力を持ちながら、定位置をつかめなかったのは守備力と対左投手の打撃にあった。10年目の31歳は今季、左翼の定位置をつかもうとしている。13年に1軍で始めて100試合以上出場してから、長い道のりだった。

 14年春季キャンプは左腕克服のために左投手中心の打撃練習が予定されていたが、キャンプ2日目に負傷離脱を余儀なくされた。16年1月は自主トレに左投げの打撃投手を自費で同行させた。左腕が苦手なイメージを払拭(ふっしょく)させるのに必死だった。

 今年はシーズン序盤こそ右投手が先発時のスタメン出場が続いたが、徐々に左投手でもスタメン出場の機会が増えた。前日1日も左の岩貞相手に5番で先発。4回に追加点の呼び水となる中前打を放った。対左投手に打率3割3分3厘と対右投手の3割2厘を上回る。「いい内容のものも出せているし、結果も出ている。継続してやっていかないといけない」。内容と結果で、定位置奪取へ着実にアピールする。

 マジック点灯は持ち越しとなった。今日3日の阪神先発は左の岩田。もう左も苦手としない松山が、阪神の自力Vを消滅させるアンパンチをさく裂させる。【前原淳】