阪神中谷が追いすがるヤクルトに引導を渡した。1点差に詰め寄られていた7回2死一塁。近藤の3球目だ。低いチェンジアップにグッと耐える。間合いを作って強振。とらえた球は左翼席に一直線で刺さった。

 今季15号2ランでリードを3点に拡大。「しっかりとらえることだけ。長打を打とうとか欲はなかった。次の1点で試合の流れが変わるところだったので、いい追加点になったんじゃないかと思う」。チームを安全圏に導く一撃だった。前日22日は4番でアーチ。充実ぶりを示す、今季2度目の2試合連続本塁打だ。

 将来の4番候補は「自分らしさ」を貫く。試合前練習のフリー打撃。春先は何度も豪快に引っ張っていたが、いまは違う。ひたすら右打ちに徹する。どん詰まりで右前にポトリと落としている。バットは両腕で振るが中谷は右腕で押し込むタイプだという。ギリギリまで迫り来る球を待ち、右方向へ引っ張るように打つ。球に最大限のパワーを伝える作業を丹念に繰り返し、アーチにつなげる。練習を見た球界関係者も「中谷は自分のやるべきことをしている」と感心していた。

 8月上旬、金本監督が和製大砲に大きな期待を寄せた。20本塁打も圏内にとらえ「打たせるよ」と話していた。阪神の生え抜き右打者では06年浜中以来の大台まで残り5本。この日、アーチを懸けた福留と並び、再びチーム最多本塁打だ。前夜の守備のミスをかき消す反発力も頼もしい。「投手の方にいつも頑張ってもらっている。しっかり打線が点を取りたい」。初々しさは消え、主力の顔になっていた。【酒井俊作】

 ▼阪神は福留、糸井、中谷が本塁打。1試合3本塁打以上は今季8度目で、前日に続き2試合連続3本塁打となった。阪神の2戦連続3本塁打以上は、11年7月16、17日の横浜戦(横浜)で3本(鳥谷、マートン、金本)、5本(新井貴2、金本、藤井彰、関本)打って以来6年ぶり。神宮での2戦連続3発以上に限ると、07年8月21日の3本(鳥谷、桧山、矢野)、22日の4本(桜井2、関本、金本)以来10年ぶり。