阪神4番候補の新外国人ウィリン・ロサリオ内野手(28)ってどんな選手? 3年目金本阪神の命運を握る主砲の素顔を、韓国プロ野球ハンファ前監督の金星根(キム・ソングン)氏(75)が明かした。金氏は15年から昨年5月末まで指揮官を務め、約1年半、主軸で起用したロサリオを最もよく知る人物だ。長所はもちろん、弱点も熟知。阪神での今季の活躍について「打率は3割近く、本塁打は25本」と太鼓判を押した。

 金星根氏は15年から昨年5月末までハンファ監督を務めた。約1年半、主砲で起用したロサリオの素顔を最もよく知る人物だ。

 金星根氏 彼は固め打ちができる打者。投手によっては3、4本と打つ。真ん中近くの球は必ずつかんでいくし、ルーズな(緩い)ボールもうまく拾っていく。何より真っすぐに強い。150キロくらいの速球でもスタンドに軽く持っていくからね。1年目の春のキャンプ(16年、沖縄・東風平)のフリー打撃では、中西太さんの伝説のアーチ(※)ではないけども、低いライナーでフェンスを越えていた。

 2年連続3割30発100打点をマーク。非凡な打撃センスに加え努力する姿が印象に残っているという。

 金星根氏 研究熱心なところがあって2年目は対戦投手の配球などもしっかり読み出した。兄貴の存在も大きかったかもしれない。キャンプから実の兄がやってきて、シーズン中も何かとアドバイスしていた。スタンドにいる兄と練習中なども身振り手振りでコミュニケーションしていたから、精神的な支柱になっていたんじゃないかな。

 実兄は心身ともにケアしてくれた大事な師匠だった。そして金氏はロサリオの「弱点」も指摘しつつ、克服にもう1人の師匠が一役買ったことを明かした。

 金星根氏 技術面ではバットが下から出るクセがあった。飛距離にこだわり、打球を上げようとすると左脇が開いてしまう。その悪い部分が出なければ、数字は残った。(元広島の)正田打撃コーチ(現KIAコーチ)がいたので、マンツーマンでやらせていた。悪くなると軸足で回転せず、左足の方へ体が流れていくので、軸を後ろに残すように徹底指導した。自分のプラスになるコーチのアドバイスは真剣に聞くし、きちんとついていっていたね。

 そんなロサリオの性格は? 金氏は笑って言った。

 金星根氏 いつも陽気で人なつっこいし、選手たちとも雰囲気がよかった。グラウンドでも怒ったりした姿は見たことがない。私が韓国プロ野球で監督をやってきた中で一番、素直で同僚との関係も良かった外国人選手じゃないかな。キャンプでは夜間練習にも顔を出したりしていた。僕は結構長い時間打たせるけど、文句は言ってこなかった。

 だが捕手もできる前評判には苦笑いで首を振った。

 金星根氏 可能性はゼロですね。私も1試合だけ使ったことがあるけど、捕球体勢も腰が高く、送球の動作も大きい。配球も単調だし、足の速い日本の選手には簡単に走られますよ。(ハンファで)今年の後半戦で、外国人投手の時に1度マスクかぶったようだけど…。まあ難しいでしょう。

 一塁と三塁を守れる触れ込みにも少し首を傾げた。

 金星根氏 三塁は売り込みのスカウトレポートにあるだけで、守るのは一塁だけ。守備はだいぶ良くなったけど、スローイングに柔らかさがあればね。捕手をやっていたので上から投げてしまう。サイドから投げる柔らかさはないですね。

 守備は少々難あり? だが、肝心の阪神での打撃については太鼓判を押した。

 金星根氏 ハンファ入団時にアメリカから取り寄せたデータでは右投手が打率2割台、左投手が3割台。韓国での1年目もそうだったけど、日本でも戸惑いはあると思う。でも2年目には右投手も良くなったね。好調な時はテークバックを大きく取れるけど、調子が悪くなると、投手側に突っ込んでいくことが多くなるので、いかに「間」を取れるかだと思う。打撃フォームの軸をきちんと決められたら、打率3割近く、ホームランは25本くらいは打つんじゃないかな。【取材・構成=佐竹英治】

 ※中西太の特大本塁打 1953年(昭28)8月29日の大映戦で林から、平和台球場で超特大弾をかっ飛ばした。推定飛距離161メートルは、日本人打者で最大級とされる。打った瞬間、本人は二塁打か三塁打と思った打球が低空飛行でグングン伸び、中堅スコアボードを越えて球場の外へ飛び出した。

 ◆金星根(キム・ソングン)1942年(昭17)12月13日、京都府生まれ。京都府立桂高校を卒業後、韓国へ。実業団チームを経て、82年の韓国プロ野球発足を期に指導者としてプロ入り。84年OBベアーズから昨年5月末にハンファを退任するまで、6球団でのべ23季監督を歴任。07~11年にSK監督で優勝3回。監督勝利数は歴代2位で、野球の神様を意味する「野神」の異名を持つ。05年には日本のロッテにスタッフとして入団し、06年には1、2軍巡回コーチを務めた。