侍ジャパンから戻ったばかりのソフトバンク甲斐拓也捕手(26)が、5回途中から緊急出場した。7回からのはずが、出番は突然やってきた。「どんな時でもいけるようにしておかないといけない」。スタメンの育成堀内が5回2死一塁、加治屋のワンバウンド投球を止めようとして右手親指を脱臼。甲斐が急きょ防具をつけ出場した。

 1球で5回を切り抜けると、その後若手3投手をリード。6回、森が空振り三振して振り逃げしようとしたが、はじいた球を素早くつかみジャンピングスローでアウトにした。9回にも二盗を試みた松井を刺した。打撃でも6回に左翼フェンス直撃の二塁打。「打撃の方は聞かないでくださいよ」と悩んでいる中で首脳陣にアピールした。

 工藤監督は「さすが経験を積んだ人と積んでいない人は違う。積むことが大事」と目を細めた。キャンプ終盤から捕手陣の故障が続いている。高谷が右肘手術。栗原が左肩脱臼。甲斐が侍に招集されている間の3、4日の阪神戦は1軍経験のない谷川原、九鬼、育成堀内の3人でしのいだ。その堀内も負傷。いよいよ甲斐が143試合フル出場し、真の正捕手に成長しなければいけない。

 工藤監督は「ケガが怖いと野球選手はできない。そうは言っていられない」と話す。「日の丸を背負ったからと勘違いしてはいけない。まずはこのチームで正捕手にならないと」と言う甲斐もケガを恐れない。危機的状況の中、甲斐がたくましく成長している。【石橋隆雄】