史上最強の得点力だ。西武が4本塁打を含む12安打8得点でDeNAを粉砕した。今季のチーム総得点は12球団断トツの305点。球団史上最速で300点を突破した。浅村栄斗内野手(27)が6年連続2ケタとなる10号、11号の2ラン2発を放てば、山川穂高内野手(26)は12球団トップを行く17号ソロ。2人がアベック弾を打てば今季6戦6勝だ。一時はゲーム差なしまで迫られた2位日本ハムと1・5ゲーム差とした。

 浅村は、頭上に立てたバットの先端でグルグル円を描いていた。3-1の7回1死一塁、DeNA三嶋の150キロはど真ん中。投球モーションに合わせ、バットの動きを止め、直後に強く振り下ろした。ライナーで左中間最前列へ。5月11日以来の本塁打となる10号2ランに「ホッとしてます。風も味方してくれた。全然、貢献できてなかったので」と打ち明けた。勝負の流れを決めた。山川がソロで続き、今季6度目のA&Yアベック弾。中盤まではクロスゲームだったが、終盤の猛攻で快勝した。

 浅村は初回、5回に単打。締めは、9回無死一塁だ。豪快に、逆方向の右翼席中段へ再び2ランを放り込んだ。「まさかですね」と驚いたのは、決断が予想以上にはまったからだ。

 これまでは、頭上で寝かせたバットの先端を上下に揺らして構えていた。だが、5月末からスランプに陥った。安打が出ても「自分の感覚と違う」と首をかしげた。31日からは16打席連続無安打も記録。「右肘が張りすぎてバットが出てこない。ポイントも自分より近い」。打破しようと、いろいろ試みた。フリー打撃で山なりに投げてもらい、引きつけて打った。トス打撃では、まずバットを前後に振って体の前に「×」を描き、打つポイントを意識。それから、球をトスしてもらった。「変化球攻めが多い。そこに真っすぐが来ると、ファウルになる。早めに手を打たないと」。引き出しをフル回転した。

 この日の試合前練習で「力感をなくそう。打つ瞬間だけ力を入れる」と構えを変えたら、しっくり来た。そのまま、試合でも決行。怖くはなかったのか。

 「普通に打っても打てない。何かを変えてヒントになれば。良い打順を打たせてもらっている。自分の打撃で勝敗が決まる。いつまでもダラダラできない」

 打てない時に、ここまでフォームを変えたのは初めてだった。リスクは承知の上。主軸の覚悟が、勝利を呼んだ。【古川真弥】