広島とソフトバンクによる日本シリーズ第1戦は、延長12回4時間38分の激闘の末、2-2の引き分けに終わった。ソフトバンク工藤公康監督(55)は先発千賀の初回2失点を打線が5回に挽回すると、5回から武田、石川、森、加治屋、高橋礼、モイネロの6投手をつぎ込んだ。広島緒方孝市監督(49)も先発大瀬良から、岡田、一岡、フランスア、中崎、ジャクソン、ヘルウェグ、中田とつないで、しのぎきった。日本シリーズの初戦引き分けは、工藤監督が西武時代にMVPに輝いた86年の西武-広島戦以来32年ぶり。2年連続日本一を目指すソフトバンクの吉兆となるか。

ソフトバンク工藤監督が、短期決戦用の継投で、自身がMVPに輝いた86年日本シリーズ以来の初戦引き分けに持ち込んだ。吉兆とばかりに「この引き分けは大きい。明日に必ずつながる引き分け」と喜んだ。

初回に2失点も2回から立ち直った千賀をスパッとあきらめ、5回2死二、三塁で代打デスパイネを送った。起用が当たって同点に追いついた5回からは、武田を投入。2イニング目の6回に1死一、三塁のピンチを迎えたが会沢を一飛、安部にはフルカウントから高めにフォークを投げ、空振り三振。武田は「早く行くことを予想していた。最後は気持ちだと思っていた」と感情を表に出した。

7、8回は石川が2回無失点。今季チームトップタイ13勝、うち6勝を中継ぎで挙げた右腕もきっちりと仕事をした。石川は「マウンドがイメージより硬く、傾斜があったのでばらついたが、セットで投げて修正できた」と、慣れないマウンドにもすぐに対応した。

工藤監督は「第2先発の2人がよく投げてくれた」とねぎらった。CSでは先発が4枚しかそろわない中でも、武田、石川を先発に戻さず中継ぎを厚くしたことで、3位日本ハム、1位西武を抑え込んで勝ち上がった。下克上の道を歩む中で完成されたパターンだった。

同監督は「日本シリーズは移動日がある」と話す。連戦で決着をつけるCSと違い移動日が2度、計2日ある。その2日が、2人のロングリリーフという新たな適性を後押しする。「連投もありえます」と話すように、武田、石川が今日以降連投できるのは心強い。

第2先発コンビが4イニング投げたことで、9回は森、10回と11回は本来8回を任される加治屋が投げた。12回は高橋礼とモイネロで締めた。6人のリリーフ陣が「0」を8個並べた。広島のブルペンで残ったのは中村祐のみ。ソフトバンクはスアレス、嘉弥真を温存できた。敵地で引き分けた意義は大きい。【石橋隆雄】