ソフトバンク工藤監督の攻めの采配もズバリと当たった。「あそこは勝負だと思ってデスパイネを使った」。2点を追う5回2死二、三塁。切り札のデスパイネを代打起用し、同点に追いついた。指名打者が使えないセ本拠地のためスタメンを外れていた。先発千賀に代えて、迷いなく送った。二遊間へゴロを放ったデスパイネは全力疾走。二塁手菊池の送球を一塁松山が後逸(記録は1ヒット1エラー)。2点が入った。キューバの大砲は「いつものようにしっかり準備して、集中して打席に立ちました。大事な場面で2点入って良かった」と分厚く膨らんだ胸を張った。

CSでは上林と並びチームトップタイの10打点を挙げていたデスパイネ。だが、村松外野守備走塁コーチの「風が吹くと(マツダスタジアムの)外野の守りは難しい」という意見を採用。試合前練習が始まる前にデスパイネを監督室に呼び、本人に直接話した。

ソフトバンク打線は広島先発大瀬良の立ち上がりを狙ったが、4回まではノーヒットと完璧に抑え込まれていた。嫌な流れになってしまったが、積極策で引き戻した。7回には2死走者なしでも、代打松田宣を送るなど、積極策を貫いた。

西武とのCSファイナルステージでは4勝したすべてで先制点を挙げた。5試合で63安打44得点と猛打で山賊打線に打ち勝ったが、日本シリーズ初戦は広島投手陣の前になかなか追加点を挙げられなかった。内川が「こっちが大チャンスの時でも、(ホークスファンの)声援がかき消されることによって、そんなにチャンスではないような気になったりする。球場の雰囲気に惑わされないように」と話していたように、厳しい戦い。試合は12回で引き分けたが、敵地で価値あるドローとなった。【石橋隆雄】