阪神ドラフト1位近本光司外野手(24)が快足を飛ばして、グングン加速した。満員の京セラドーム大阪のファンも一斉に立ち上がった。

一塁も二塁も蹴って一気に三塁へ-。三塁に到達すると、にこやかに両拳をあげる「Vポーズ」。同じタイミングで虎党はメガホンを上げた。ベンチでは矢野監督も「Vポーズ」だった。

「夢中でしたね。(三塁)ベースに到着して、手袋を外して、六甲おろしが終わったぐらいにブワァって盛り上がってるのを一周、見たんですけど、そのときにブルってきましたね。これが阪神ファンなのかと感じました」

2番中堅でスタメン出場。ドラフト1位がオープン戦の好調をそのまま体現した。6回2死、失策で出た1番木浪を一塁に置き、小川の初球を狙った。外角高め128キロチェンジアップを捉えると打球は右中間を割った。近本が「しっかり、やりたいことができてよかった」と、爽やかに振り返えれば、矢野監督も「初球にああいう形で点を取れたというのは、相手に与えるダメージも大きかった。良い1点でした」と、新人の一振りをねぎらった。

守備でも魅せた。初回、無死一、二塁のピンチで山田哲が中前打。だがセンターからの好返球で間一髪タッチアウトにした。「結構あの場面は手汗がひどかった。(刺殺で)緊張がほぐれたというか、ふと我に返って、いつも通りを心掛けました」。春季キャンプやオープン戦では周囲からは「肩が弱い」と指摘も受けた。ただ、そんな声が耳に入っても気にしない。「カットマンまで強く正確に。もちろん、ひとりでホームまで投げる意識もあります」。打点1に等しい千金守備でメッセンジャーを援護した。

どこまでも持ってる男だ。延長11回1死三塁のサヨナラ機。「絶対、ここで決めてやろうと。まさかの…」。相手暴投を呼んで、ナインにもみくちゃになった。初ヒットの記念球は「親に渡します。今日、見に来てくれていたので」。公式戦のデビュー戦で、最高の親孝行だ。淡路島で生まれ関西で育った。虎に地元スターの誕生だ。【真柴健】

 

▼近本が放った6回にプロ初打点。阪神の新人が開幕戦で打点をマークしたのは、56年大津淳が広島戦で2打点を挙げて以来、63年ぶり。

 

近本の父・恵照(よしてるさん)(現地で観戦して初ヒットを目撃)「あれだけの歓声の中で打ってくれた。チームのための初ヒット、初打点になった。やっとプロとしてのスタート。阪神ファンのみなさんを喜ばせるプレーを続けてほしい」

 

巽史明氏(近本の東浦中時代の担任で野球部監督)「泣いちゃいましたね…。あの場面で打つとは。自分のことのようにうれしかった。興奮しました。でも1本出てホッとしましたね。ここからも頑張ってほしい」