楽天ドラフト6位の渡辺佳明内野手(22)が、大好物の得点圏で覚醒した。

同点に追いつかれた直後の6回2死二塁、中前へ決勝打を放ち「石橋さんに勝ちをつけたいと思っていました」。2打席連続タイムリーで先輩右腕に約2カ月間遠ざかっていた白星をプレゼントした。

走者なしと一塁の「非得点圏」では88打数13安打の打率1割4分8厘に対し、得点圏は29打数16安打の打率5割5分2厘に変身する。勝負強さを支えるのは新人らしからぬ対応力だ。

6回の場面では、オリックス山田のスライダーに全くタイミングが合わず2球空振りし「普通のスライダーと違う。チェンジアップのように抜ける」と生きた情報をキャッチ。肩口から入ってくるスライダーを引っ張るイメージを捨て、逆方向を意識して食らいついた。「あの空振りを見たら、僕が捕手でもスライダーでいく。真っすぐが来たら仕方ないと割り切って、あのスライダーだけを待った」と狙った獲物を逃さなかった。

普段は腹の前で三塁方向に倒して構えたバットを左肩上に担ぎ上げながらタイミングを取るが、最初からバットを左肩に担ぐことで動きを省略していた。最近は内角攻めが明らかに増え、振り遅れが目立っていた中で「インコースは、うまく詰まればいい」と意識も転換。打席に入る前の素振りにも工夫を凝らす。

軸足に体重を乗せたままクルッと回転して体を開く動作を繰り返すのが、大学時代から続けるルーティン。「いかに前に出されないかを考えています」。冷静に策を張り巡らし、腹をくくった22歳が3位タイ浮上に導いた。【亀山泰宏】