ソフトバンクが敗れれば2位転落となる西武との首位攻防戦を制した。

試合を決めたのは柳田悠岐外野手(30)だ。両チーム無得点の3回に先制の7号ソロ本塁打を放った。9月に入り、離脱していたデスパイネも戻って“フルメンバー”となった鷹が大きな1勝から優勝へと突っ走る。

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打った瞬間にそれとわかる、柳田らしい放物線がバックスクリーン右に飛び込んだ。両軍無得点の3回1死。西武十亀の甘く入った変化球を逃さなかった。「集中して自分のいいスイングができました」。天王山の中の天王山。チーム5連敗、カード2連敗で迎え、敗れれば2カ月ぶりに首位を明け渡すという1戦で大きな大きな1発になった。

昨年は酸いも甘いも味わったメットライフドームだ。西武を追いかけていた9月中旬、試合前練習中に打球が頭部に当たり、離脱を余儀なくされた。その後チームは連敗し、リーグ優勝が遠のいた。そのうっぷんを晴らすように、2位で挑んだCSファイナルステージではMVPの活躍でチームを日本シリーズ進出に導いた。

4月から約4カ月戦列を離れていた今季はこのカードがメットライフドーム初見参だった。前日8月31日は2つの適時失策を犯し大敗。この日は試合前に自戒を込めて、殊勝にノックでゴロを受ける姿があった。「勝って良かった。野球の神様っているんだな」。一夜明けての勝利に口元を緩ませ、おどけた。

何が何でも落とせない戦いに、ベンチも動いた。左背部を痛め離脱していたデスパイネを、2軍戦などの実戦出場なしで急きょ呼び寄せ、即先発4番で起用した。約2週間ぶりに復帰した大砲も9回にダメ押しの適時打を放つ活躍。工藤監督は「(カード)3連敗したくないという思いをみんなが持って戦って、その通りの結果にしてくれた。みんながそろった最初の試合で勝てたのは大きい」と喜んだ。

8月21日に復帰してから、前日までチームが1勝6敗だった柳田は「流れってのはあるんでね。自分の仕事をしたいと思っていました」と自らのバットで断ち切った。「デスパも帰ってきた。残り21試合、クタクタになるまで野球したい」とVまで突っ走る覚悟だ。【山本大地】