巨人岡本和真内野手(23)が、通算415本塁打の西武中村剛也内野手(36)と都内で3年連続で合同自主トレを行った。1年目は「本塁打量産の心構え」、2年目は「40本塁打への技術」を伝授され、長距離砲に成長。今年はあと9本足りなかった40発に向け、手首に焦点を当てた「ピンポイント技術」を学んだ。【取材・構成=栗田成芳、久保賢吾】

岡本が、スタンドティーに置かれたボールをフルスイングした。フック回転のかかったライナー性の打球は、切れながら左翼ファウルゾーンに飛んだ。「今年、レフト方向への本塁打が少なかったんちゃう?」。後ろでジッと見つめた中村から、即行で指摘を受けた。「そうなんです。中堅から右方向の方が多かったです」と答えた。

前夜、中村は岡本の今季のホームラン動画集を探し、左翼方向への本塁打が少ないことに気付いた。実際に数字を比較すると今季31本塁打中、左翼方向は14本、中堅+右翼方向は17本だった(中村は左翼方向15本、中堅+右翼方向15本)。

中村 インパクトの後、もう少し手首を返さないように意識してみたら?

手首を返せばバットのヘッドも返るので、返るのが早ければ引っ張った打球にはフック回転がかかる。右打者のフック回転の打球は左方向に流れ、ドライブもかかって、打球も上がらなくなる。ヤクルトのバレンティンのように手首を返さないようにフォロースルーを取れば、バットはローフィニッシュになりやすく、打球は切れずに飛んでいく。手首の返しを意識した後、それまでファウルゾーンに曲がった打球がフェアゾーンに落ちた。

中村 40本を超えるには、レフトに引っ張った1発も増えていかんと。今年は何本か損したやろうから、今のような打球が増えれば40本は超えるな。

岡本の表情に笑みが広がった。勢いに任せるように、過去2年間、自ら質問することが少なかった岡本が尋ねた。「構えてる時、右脇、開けてますよね?」。中村は下に置いたバットをスッと構え「そうやね。今年の交流戦からやな。それまで全然引っ張れなくて、全然面白くないなと思って、ちょっと変えてみようと思った」と話した。

岡本もシーズン途中から構えた時に右脇を開けた。「僕はバットが(体の後ろに)入りすぎちゃうクセがあって。そうするとバットが出てこないので、それを防ごうと思いまして」。中村はうなずきながら「オレは右脇を開けた方が、バットを大きく使えるなと。大きく使えるから、ゆとりを持って、ボールをとらえられる」と言って、スイングの軌道を示してみせた。

練習後、来季の目標を問われ、先に中村が色紙に「本塁打王」と記し、岡本も「本塁打王」と書いた。「マネすんなよ」と突っ込まれ、頭をかいた岡本は「中村さんと一緒に練習したら、ほんまに打てるような気がする。3回目ですが、また新しいことを教わったし、勉強になることばかりです」と感謝し、自身初の本塁打キング獲得を胸に誓った。

【西武中村×巨人岡本 合同自主トレVTR】

◆17年 この年、出場15試合で0本塁打だった岡本に、中村は「適当論」を伝授。「ホームランを打ちたい」と話す岡本に「適当に打てばいい」「それなら息の長い、品のある打球を打とう」。その心は「片仮名で『テキトー』は雑に感じるが、漢字なら適する当たり。考えることも大切だけど、考えすぎもよくない。だから、適当。インパクトの瞬間は80%で、打った後に100%に。そんな感覚でいい」。翌18年シーズン、岡本は史上最年少の「3割30本塁打100打点」を達成した。

◆18年 中村が、この年33本塁打を放った岡本に「来年は40発やな」と大台到達への技術を伝授。岡本の球の捉える位置を「下だから滑って、打球がフワッと上がる。もう少し上。厚く、打たないと」と指摘。また左脇が締まりすぎ、ヘッドの抜けが窮屈に見えたため「左脇を開けて、フライングエルボー気味でもいい」と助言。フォロースルーでの意識として、通常と逆の投手側の脇を開ける“逆フライングエルボー”のススメを説いた。

○…中村が、岡本に「満塁の極意」も伝授した。歴代最多20本塁打の満塁男で、今季も打率5割3分1厘、4本塁打、49打点と大爆発。今季、2割6分7厘、0本塁打、12打点の岡本に「オレはゲッツーになったら…とか、考えへんからね。そうなったら、仕方ないやろとね。余計なことは頭に入れへんのが大事なこと」とアドバイスした。