エースが締めた。苫小牧駒大が東農大北海道を3-1で下し、18年春以来3度目のリーグ制覇を飾った。主将でドラフト上位候補の最速155キロ右腕、伊藤大海(4年=駒大苫小牧)が4回途中から救援。5回2/36奪三振無失点の好投で、勝利に導いた。苫小牧駒大は、明治神宮大会出場をかけ、札幌6大学リーグ優勝チームとの代表決定戦(10月12日開幕、苫小牧・とましんスタジアム)に臨む。

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どうしてもほしかったタイトルを手にした。9回2死、最後の打者を三振に切った伊藤は、中堅方向に振り向き右手人さし指をぐっと空に伸ばした。北海道6大学リーグ戦デビューの18年春に頂点に立ち、大学ラストシーズンも優勝で締めた。「気持ち良く次のステージに向かえる。本当にうれしい」。マウンドに集まった仲間の抱擁を一身に受け勝利の喜びに浸った。

後輩への感謝は忘れない。20日に自身が敗戦投手になった翌日、リーグ最終戦は“愛弟子”後藤晟(2年=松本国際)が10回完封で優勝決定戦に持ち込んだ。この日は0-1の3回2死二、三塁で駒大苫小牧の1学年後輩、土井凜太郎中堅手(4年)が逆転の右越え2点適時二塁打。土井は「ずっと投手陣におんぶに抱っこだったので少しでも楽にしたかった」。弟分の援護を受けての戴冠に伊藤は「みんなの思いが1つにつながった。全員でつかんだ勝利」と喜んだ。

投手として引き出しの多さも披露した。5日の対戦で4安打された守屋俊介(3年=暁星国際)に、この日も5回の最初の対戦で中前打を浴びた。「5打数5安打はさすがに。考えを変えた」。7回、9回の対戦は、日本ハム、巨人などプロ3球団のスカウトが視察する前で、今リーグ初のナックルカーブを織りまぜ連続三振に切って取った。9回2/3162球を投げた函館大戦から中2日。剛だけでなく柔も併せ持つことを、さりげなくアピールした。

試合後には、プロ志望届を提出。10月26日には、人生を決めるドラフト会議が控える。上位候補で、既に地元日本ハムなど7球団から調査書が届いている。「代表決定戦に勝ってドラフトでいい知らせをもらって(11月の)明治神宮大会に行く。それが最高のビジョン」。気を緩めることなく、大学生最後の戦いに、備える。【永野高輔】

 

▽来春から北洋大に改名するため苫小牧駒大として最後のリーグ制覇に導いた大滝敏之監督(66) 最後に何かを残したいというみんなの思いが結実した。代表決定戦は函館大、東農大北海道の分まで、しっかり戦いたい。

 

◆伊藤大海(いとう・ひろみ)1997年(平9)8月31日、鹿部町生まれ。鹿部小2年から野球を始め、鹿部中では函館東リトルシニア所属。駒大苫小牧2年春のセンバツ初戦で創成館(長崎)に完封勝利。16年駒大進学も17年苫小牧駒大に再入学。18年全日本大学選手権は初戦で日本文理大に完投勝利。18、19年侍ジャパン大学代表。家族は両親と姉、弟。176センチ、80キロ。右投げ左打ち。