優勝請負人が日本一への夢をつないだ! ロッテ藤原恭大外野手(20)が1点を追う4回2死一、二塁から、値千金の3号決勝3ランを右翼席へたたき込んだ。チームは9回2死後に23分間の雨天中断を挟みながら1点差で逃げ切り、23試合ぶりの連勝。単独2位に再浮上した。8日はクライマックスシリーズ(CS)出場権をかけた大一番、3位西武との直接対決。勝てば4年ぶり7度目のCS進出が決まる。

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夢を乗せて、藤原の弾丸ライナーが7メートルの海風をつんざく。時間にして約3・5秒が、スローモーションのように進む。白球が右翼席に近づくにつれ、スタジアムの声量が増えた。「チャンスでしたし、1球目から思い切っていってやろうと思っていました」。1点を追う4回2死一、二塁からの逆転3ラン。フルスイングが試合を決めた。

初球のフォークに反応し体重を右足に乗せきった。高速&低弾道でぶっ飛んだ打球は、右翼席の男性ファンの炭酸飲料の紙コップを倒した。「おかげさまで手とジーンズがベトベトです」と歓喜どころではない状況となっても、ファンも笑顔。オリックス榊原の荒れ球に手を焼き、3回まで無得点。そんな嫌な雰囲気を一変させた気分爽快な“スプラッシュ弾”は、マリンの空気をガラッと変えた。

10月中旬、コロナ禍のチームの救世主となったニューヒーローも、最近はバットが湿った。井口監督が「受け身な打者が多い中で、しっかりと初球から振れる。流れを変えられる打者」とベタ褒めする若者だからこそ、相手も研究を進める。変化球でカウントを整えられることが増えてきた。

どうするか。自慢の脚力に頼らず、フルスイングを貫くのが藤原だ。「変化球で崩されて、直球も打てなくなっていたので、初心に戻って打ちました」。2軍で34打席連続無安打の時は「安打が出ないなら、切り替えて本塁打を狙おう」の思考でスランプを脱したこともある。大阪桐蔭で甲子園春夏連覇。強いメンタルをプロでも見せ始めた。

荻野と藤原の1、2番でけん引する形が出来上がってきた。「結構、2番を打ちたいと思っていたので」と爽やかに笑う。少し遠ざかったCSが、自身の活躍で再び手の届くところに戻った。「ベンチの雰囲気を味わうだけでも違うと思うので」。ロッテの未来にとっても大きな1勝を、全員でつかみにいく。【金子真仁】