阪神大山悠輔内野手(26)がリーグ戦再開を前に、背番号3の進化を追う日刊スポーツ独自企画「比べるのは昨日の自分」の中で胸に秘めていた覚悟を言葉にした。第2回のテーマは「責任感」。田中将から決勝2ランを放った12日の楽天戦後に明かした「借りを返せて良かった」という感情の裏側には、「負ければ全部自分の責任」という決意が存在した。【取材・構成=佐井陽介】

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そのひと言に、主将でもあり4番でもある男の責任感が凝縮されていた。

12日の楽天戦。仙台で田中将から決勝2ランを放った試合後、大山は偽らざる感情をコメントに乗せていた。

「ここ数試合、自分で流れを止めているというところもあった。そういった借りを返せて良かった」

交流戦の序盤から中盤、背番号3は敗戦の度に全責任を請け負っていたのだ。

「自分がしっかりやれば、もっといい方向に行く。チームがうまく流れていないのは自分の責任かなと思っています」

これは2戦連続でソフトバンクに大敗した翌日の7日、札幌遠征に向かう直前の言葉だ。

大山はこの2戦とも失点につながる失策を犯し、矢野監督からは「悠輔とかには結果も含めて、引っ張っていくところを見せてほしかった」とあえて名指しで奮起を促されていた。

「もちろん、そういう重要なポジションにいるのは分かっています。勝てば全員の勝利、負ければ全部自分の責任だと思ってやっている。そういう言葉は当たり前のことかなと思って受け止めています」

パ・リーグ相手の7敗をひとまとめにして背負っていた主将にとって、日米通算179勝右腕に土を付けたアーチ、そして連日の白星は何よりの良薬となったことだろう。

もともと、交流戦は挽回のタイミングと位置づけられてた。

「もちろんモヤモヤする部分はありましたけど、悪いのはケガをしてしまった自分ですから。ずっと試合は見ていました。チームのみんなを応援しながら、なんとか早く治したいという気持ちでいました」

背中の張りで5月6日に出場選手登録を抹消され、19日間にわたって戦線離脱。1軍復帰した交流戦開幕日からの3週間は、ため込んだ感情をぶつける期間となるはずだった。

ただ、交流戦中盤までチームは勝ち負けを繰り返す「オセロ状態」から抜け出せずにいた。主将が責任を背負い込むのに十分な状況が続いていたのだろう。

「テル(佐藤輝)がチームを引っ張っていってくれている。もっと自分もしっかりしないといけない。テルの勢いに負けないように全員がついていって、どんどん良い流れを持っていくべき。全員が同じ方向を向いてやっていきたい」

6月上旬、大山は後輩に感謝しながら、同時に自身を戒めていた。

交流戦18試合の個人成績は打率2割3分2厘、3本塁打、10打点。一方、チームは負傷者を出しながらも交流戦最終週を6連勝で締めくくった。次は背番号3が先頭に立ってナインを引っ張る番だ。

リーグ戦再開カードは2位巨人との甲子園3連戦。ここで7ゲーム差をさらに広げれば独走スピードは加速するが、先を見据える主将はどこまでも冷静だ。

「長いシーズン、もしかしたら悪い時の方が多いかもしれない。そういう時に下を向いてしまったらいい流れも来ない。無理やりじゃないですけど、ちょっと頑張って顔を上げるだけでも、もしかしたら変わってくるかもしれない」

有事への心構えをそうイメージした後、最後は「僕が一番大事にしたいこと」も熱弁した。

「投手が打たれてしまったら野手がカバーする。野手が打てなかったら投手がカバーする。1人1人が戦うのではなく、チーム全員で束になってやっていけば、力は大きくなる」

勝てば全員の勝利-。仲間と喜びを分かち合う日々の先に美酒が待つのだと、大山は信じる。

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