阪神が執念ドローで首位を守った。巨人との首位攻防第3ラウンドは先発秋山と2番手藤浪が5回までに6失点。負ければ一日天下の危機で、6回に4点を返すと、7回に代打の糸井嘉男外野手(40)が同点のタイムリー二塁打を放って6-6。2戦連続逆転勝ちで前日首位を奪った勢いそのまま、0-6から驚異の粘り腰を発揮した。

勝ちに等しい引き分けで巨人3連戦は2勝1分け。甲子園を3夜続けて熱狂させた虎の強さが際立った。

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目の前で必死に食らいつく後輩たちの姿に、燃えないはずがなかった。

「絶対に勝ちたい! それだけです」

1点差に迫った7回2死一塁。代打糸井が仲間の思いを受け取った。デラロサに2球で追い込まれてもファウルで粘る。5球目、低めのチェンジアップを勢いよく振り抜いた。打球は左中間を真っ二つ。二塁をオーバーランした糸井は、思わず両腕を振り上げた。

先発秋山と2番手藤浪で、5回までに6点のリードを許す苦しい展開。だが、猛虎打線には泥臭い底力があった。6回に中野の三塁打からつなぎにつないで、打者一巡の攻撃で4点をかえした。7回もサンズの左前打から敵失、内野ゴロ…。懸命に後ろにつないだ。「みんな本当にムードがいいし、どんなに点差があってもみんな攻めていく、勝つという思いで一体となって戦えている」。攻めのムードに乗ったベテランが殊勲の一打を放った。

若手が躍動するチームで唯一の40歳野手。年齢も壁も感じさせないのが「超人」のすごさだ。この日は全体練習前に早出特打に参加。佐藤輝、島田、小野寺と、ひと回り以上離れた仲間とひたむきに汗を流した。「数少ない打席の中で結果を出すという、そこには練習が必要なんで。必要だと思ったから出ただけです」。ベンチでは味方を全力で鼓舞しながら、出番に備えて最善の準備をする。3日の初戦も6回に代打で適時二塁打を放ち、逆転勝ちへの口火を切った。大きな背中は、佐藤輝ら後輩たちの見本になっている。

矢野監督は「今日のゲームは勝ちに等しいような引き分け。2つ勝てたのも大きい」と手応えを口にした。そして糸井の存在感を再確認。「代打で打つって簡単じゃない。いいピッチャーから打ってくれたのが価値があるし、チームにとっても嘉男が打つと盛り上がる。その点でも大きな1本でした」とたたえた。

3年ぶりの巨人3連戦3連勝はならなかったが、劣勢をはね返す強さが光った。勝負どころにいたのは糸井だった。「首位を争う相手として絶対に巨人には負けられないので、チーム全員ですごく気持ちのこもった3連戦でしたし、これからも勝ちに貢献する一打を打てるように頑張ります」。熱い超人とともに、頂点へ突っ走る。【磯綾乃】

▽阪神小川(7回から4番手で登板して1回を3者凡退)「前の回に点が入ったので、何としても0点で抑えるという気持ちで投げました。0点で抑えることができて良かったです」

▽阪神原口(6回に代打で後半戦初安打となる右前適時打)「大きなチャンスでしたし、しっかりいい準備ができていたので初球から思い切って打ちにいくことができました。いいヒットになって良かった」

▽阪神ロハス(6回に中前適時打)「いい流れだったからその流れを断ち切りたくなかった。しっかりランナーをかえすことができて良かったよ」

▽阪神井上ヘッドコーチ(6点差を追いつき)「頭で出ていっている人間と後ろでいく人間たちの仕事の役割など、『俺がやる、やる』という陽の気が流れている。いい流れになっているからこそ、後ろからいっている人間もいい仕事ができているのかなと思う。全員で戦うというのが証明されているのかな」