20年の巨人ドラフト1位、平内龍太投手(23)がプロ野球史上初の快挙をたぐり寄せた。打線が逆転した直後の5回から登板し、2回を完全投球。今季チーム5人目となるプロ初勝利を挙げた。4月までに初勝利5人は史上初。すでに11セーブをマークするドライチの後輩の大勢投手(22)らに刺激を受けた右腕が、苦しみながら節目の勝利をつかんだ。チームは今季10試合目の逆転勝ちで4連勝。首位をがっちりと守った。

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最高の景色を笑顔でかみしめた。初白星で初のお立ち台。客席を見渡して、ペコリペコリと頭を下げた。「やっとゼロに抑えて、初勝利も挙げて本当に最高です!」。悔しがった分だけ、格別だった。

チームが逆転した直後、2点リードの5回に出番が来た。プロ入りから全6試合で失点していたが、迷いはない。「自分は向かっていかないと、なかなか抑えられない」と持ち味の直球で攻めた。150キロ超の直球を連発し、2回をパーフェクト救援。やっとウイニングボールを手にした。

「巨人のドラ1」としての宿命に、もがいた。昨季は1軍で3試合に登板し、防御率14・40。一時は投げ方すら見失った。今季に入ってもルーキーの赤星や大勢、堀田、山崎伊ら若手の躍動が続く。荷物を持つときには冗談で「大勢さん、大丈夫ですよ。持ちますよ」と笑った。周囲の若手と一緒にファンに声をかけられても「僕は人気ないので、周りのついでですよ。でもついでだと思ったらすごく喜んでくれる人もいる」。常に笑顔で、明るく振る舞うと決めている。

だが、心の奥底では「悔しさはすごくあった」と吐露した。勝負の年と覚悟を決めた今季。「自分の人生なので。プロ野球選手でいる期間はそう長くない。野球を楽しんでやりたいと思って」。迷ったら前に進むだけ。初勝利でようやくスタートラインに立った。最高の景色を、また次も見たい。【小早川宗一郎】