自慢の「キャノン砲」は肩だけではない。ソフトバンク甲斐拓也捕手(30)が豪快なアーチで和田の勝利をアシストした。0-0の2回だ。牧原大の安打と栗原の四球で2死一、二塁のチャンス。巨人の先発左腕、横川に対したカウント1-0からの2球目。135キロのフォークを迷わずしばいた。打球は低い弾道で左中間フェンスを越え、テラス席に飛び込んだ。打球速度170キロの高速ライナーが先制4号3ラン。今季3度目のV打点となった。

「何とか次につなげようと打席に立った。(打球が)抜けてくれと思って走りました。まさかホームランになるとは。最高の結果になりました」。二塁までがむしゃらに走り、笑顔でホームを踏んだ。4回には三遊間を破るヒットを放ち、8回2死二塁からバットを折りながら遊撃後方へのダメ押しタイムリー。「何とか食らいついていこうと思って」と、今季2度目の猛打賞で計4打点の活躍だ。

先発和田ら投手陣への巧みなリードもさることながら、後輩への気配りも忘れない。前日8日、打撃下降気味だった栗原に「読んでみろよ」とさりげなく1冊の本を差し出した。本のタイトルには「生きよう今日も喜んで」とあった。元ヘッドコーチを務めた達川光男氏から数年前にプレゼントされたもの。うつむきがちだった後輩に読書での気分転換を勧めた。

甲斐が打点を挙げればチームは負けない。昨年からの連勝は「30」に伸び、強固な不敗神話が続く。「まあ、それはずっと続くことではない。あまり考えないで、とにかく勝ちに貢献できるように頑張りたい」。交流戦は3本塁打を含め31打数11安打、8打点、打率3割5分5厘と絶好調。頼れる女房役が攻守に「恐妻」ぶりを発揮して、さらにチームを勢いづける。【佐竹英治】

【動画】今年4発目の甲斐キャノン 変化球とらえてテラス弾 甲斐拓也が先制の4号3ラン>>