チャンステーマ4が一瞬だけ爆発的な歓声にかわり、すぐに悟ったようなため息に変わった。

1点差に迫った7回2死満塁、打席には西武鈴木将平外野手(25)が立つ。首脳陣が打線のアクセントにと期待する、相手投手の球数を費やせる打者だ。

この日もすでに2安打。同点機、逆転機で巡った第4打席でも、4分半、6球かけてフルカウントにした。結果は右飛。鈴木は一、二塁間で天を仰いだ。

ペナントレースが全日程の4割を終えた。もともとレギュラー確定は3枠(山川、源田、外崎)で始まった1年。ライバル球団ほどの選手層の厚みはない。若手野手も多く出場しながら「あと1本」に苦しみ、気付けば最下位楽天に6毛差のところまで沈んだ。

野球には多くの指標がある。その中の1つ、チーム四球数に着目するとリーグ最少の138個となっている。四球1位のロッテは189個。チーム安打数は西武の方が12本多いものの、安打+四球の合計数は49個も負け、両チームの総得点差37点に少なからず影響している。

この日も象徴的な展開に。ヤクルト小沢が試合開始早々、外角球中心でカウント3-0としたものの、1番源田が空振り三振。そこから複数の球種を織り交ぜ、ストライク先行で攻められた。西武打線も好球必打で向かうも、野手が動かない打球が目立ち“打たされた感”も出てしまった。

6回までチーム唯一の四球が2回の栗山巧外野手(39)。プロ通算1008個目の四球だ。中村剛也内野手(39)は「四球って(取るの)難しいです」と同期入団の相棒の通算1000四球をたたえていた。

松井監督も言う。「栗山がつないでくれるっていうのは、本当に非常に大きいあの役割をしてくれたんじゃないかなと思います」。栗山は7回にもヤクルトの2番手星に7球投げさせ、最後は四球を選んだ。その後1番源田も四球を選び、チームは得点を挙げている。四球が流れを作ったイニングだった。

もちろん、打者は打つことが前提だ。松井監督も「積極的に振りに行った中で、粘っていくか、相手投手にどうやって1球でも(多く)投げさせるかっていうのは、チームとしては伝えていることです」と話す。四球=安打の価値-。西武では1軍のみならず、2軍戦でも「四球はヒットと一緒!」と声が飛ぶシーンがある。

深いカウントからいかに結果を出せるか。7回の満塁機、9番若林楽人外野手(25)で打席で5球、ファウルを打ったが、最後はスライダーをハーフスイングで三振になった。鈴木も押し出し目前のカウント3-1から3球続けて振ったが、捉えきれなかった。

松井監督は「練習では意識している中でも、実際に試合の中で」と、実戦での応用の難しさを口にする。投手に多く投げさせてからの安打や四球を「若い選手にとっては成功体験なわけですから、その数をどれだけ多く増やしていけるか。日々の積み重ねになってくるんじゃないかと思います」と話す。

四球=安打で考えると、西武投手陣の与四死球215個は現時点でリーグワーストになる。先発投手陣は粘りながらも、四球からの失点も少なくない。この日は先発平良が7回無四球投球で粘っただけに、7回裏に「あと1本」で流れを変えたかったところだ。

なお、西武打線の全ファウル(バント失敗を除く)のうち2ストライク以降のファウルが占める比率を計算すると42・1%。チーム打率2割3分台ながら四球を効果的に得点につなげて優勝マジックを点灯させた21年のロッテ打線と、偶然にも全く同じ数値になる。

中村はストライクゾーンぎりぎりのボール球の見極めを「これくらいボール」と5センチの指幅で示したことがある。豪快な“山賊”の面影が薄れた今、嫌らしい西武打線になれるか。松井監督は、惜敗を「糧」とは表現しない。「もちろん、悔しいです」とキッパリ言う。勝利と育成の両立。タフな日々はまだまだ続く。試合終了から2時間後、閉ざされた室内練習場で誰かが打ち込む音がした。【金子真仁】