西武蛭間拓哉外野手(22)はヒーローまであと1歩だった。

9回2死二塁。安打なら同点がありえる。本塁打ならサヨナラ勝ちだ。

「他の打席とはまた違う雰囲気だったんですけど、すごい、何て言うんですか、自分の中で“みなぎる”というか、ワクワクするというか、絶対打ってやろうという気持ちで打席に」

みなぎる-。この4文字に力を込めた。憧れの栗山が直前で空振り三振に。「なんとか自分が絶対打ってやろうと」。だから、みなぎっていた。

スタンドも猛烈に押した。右翼席では「チャンステーマ4」が熱唱されたが、内野席は大音量の指笛に乗って、強烈な手拍子が響いた。ただでさえワクワクの鼓動が、どんどん早くなる。コロナ禍前、早大1年時には浦添でキャンプをしている。沖縄を知っている。

「やっぱり、なんかまた他の球場とは違う雰囲気で、沖縄県民の皆さんの温かさをすごく感じたので」

しかし。強いゴロだったが、二塁手にうまく止められた。

「フォーク来て、若干ゴロになっちゃったっすけど、めちゃくちゃ(打球が)悪いわけではなかったんで、次につながる打席だったかなと思います」。

松井稼頭央監督(47)も「攻める気持ちが大事になってくる。抜けてれば最高ですが、内容的にも非常によかったと思います」とドラフト1位ルーキーの気持ちの強さを、あらためてたたえた。

1軍に上がって初めての敗戦だった。悔しい。でもシーズンは、プロ野球人生はまだ始まったばかり。

「こういう経験ができたということは、自分としてはすごく良かったので。打てなくてすごく悔しいですけど、もう1回ああいう場面で(打席が)来てほしいなという気持ちが強くなりました」

前を向いた。

「明日は何としても勝ちたいなと思います」

沖縄の思いに応えてみせる。【金子真仁】

【関連記事】西武ニュース一覧