オリックス山下舜平大投手(21)が、故郷のマウンドに大きくなって帰ってきた。

「家族とか友達も来ていたので絶対勝ちたかった。7回の(ジェット)風船、懐かしいなと思いながら見ていました」。プロ3年目で初の地元福岡での登板。モチベーションマックスで同僚山本に次ぐリーグ2位の8勝目をマークした。

2回は先頭中村晃に初安打を浴びたが、牧原大、栗原をフォークで連続三振。「フォークが今日はかなり決まって、真っすぐでも押せていたかなと思います」。カーブが思うように決まらない中、試行錯誤してきた3つ目の球種が自分を助けた。「シーズン途中、フォークが全然ダメで、変えようかなと思った時もあったけど、我慢してやると自分の中で決めたので」。強力打線相手に成長を見せた7回2安打無失点だった。

幼い頃はよくスタンドに足を運び、俊足の本多雄一や川崎宗則の雄姿に心を躍らせた。今も憧れるパドレスのダルビッシュを目にしたのも、ソフトバンク戦がきっかけ。テレビの前で祖母が、よく名前を口にしていた。「ホークスとの対戦もあって、よく投げていて、かっこいいなと思っていました」。ペイペイドームでの登板は、コロナ禍だった福岡大大濠3年夏、県の独自大会決勝で、延長11回タイブレークの末に敗れて以来。思い出のたくさん詰まった球場でヒーローになった。

登板前日の16日は21歳の誕生日。母の美智代さんから名前と背番号「12」が入ったボールペンとタオルハンカチをプレゼントされた。中嶋監督も「地元ですからね。いい投球ができて良かったと思います。だいぶ気合も入っていたでしょうし」と目を細めた。山下の快投でソフトバンクに3タテを食らわせ、2位ロッテとのゲーム差を今季最大の3・5に広げた。

18日は母校が福岡大会4回戦を戦う。「甲子園に行ってもらいたいですね」。自らが果たせなかった夏の聖地。後輩たちに最高のエールを送った。【磯綾乃】

▼今季1軍にデビューした山下が前半戦最後の試合で8勝目を挙げた。1軍デビュー年の前半戦で8勝以上は、13年に新人の小川(ヤクルト=10勝)菅野(巨人=8勝)則本(楽天=8勝)と5年目の西野(ロッテ=8勝)が記録して以来、10年ぶり。オリックスでは、阪急時代の54年に新人の梶本が12勝、59年に新人の安藤が8勝したのに次いで3人目。

 

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