侍ジャパン森下翔太外野手(23)が、日本にビッグウエーブをもたらした。「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」の1次リーグ初戦台湾戦で、7回1死から均衡を破る先制の決勝ソロ弾をぶち込んだ。台湾先発・古林叡煬に6回途中まで完全投球を許す劣勢の中で、起死回生の1発。若侍のベンチ前では、ペッパーミルならぬリラックスポーズで一体となった。井端弘和監督(48)にとって初陣を初勝利へ導いた。

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森下が、若いチームの「力み」を取り払った。0-0の7回1死、ゆったりと構えたフォームから150キロ直球を芯で捉え、弾丸ライナーで左翼席に突き刺した。ベンチに戻るとハイタッチ…ではなく、両手のひらを広げてヒラヒラと動かす「リラックスポーズ」で喜びを共有。年齢制限もあり、侍ジャパン初選出の選手も多い若いチーム。硬さもある初戦で虎のルーキーが「1点」の壁を打ち破った。「こういう時は、流れを変える1本が大切になってくると思っていた。それが自分で良かった」。

初回から打線は台湾の最速157キロ右腕、古林叡煬投手の前に沈黙。5回までは1人の走者も出せなかった。徐々に焦りも生まれてくる終盤での1発だ。

井端監督は「素晴らしかった。宮崎の合宿の時も重い空気を一振りで変えてくれたし、彼にはその力があると思っている」と絶賛。「3番左翼」起用には「特にここという時に打点を挙げてくれる。フレッシュオールスターで本塁打を打ったり、短期決戦に近い所でも活躍してくれる。迷わず3番のイメージ」と説明した。12日の練習試合広島戦でもチーム初本塁打で雰囲気を変えた森下。正真正銘の井端ジャパン第1号で、またも流れを変えた。

今大会でアマチュア時代含め3度目の侍ジャパン。選出が決まると両親には「決まったわ!」と明るい表情で報告したという。中大時代の2度の大学ジャパンは悔しさの連続だった。1年時、初選出となった日米大学野球では5試合中3試合で先発しながらも全13打席で無安打。悔しさを秘めて臨んだ4年時のハーレムベースボールウイークでは、大会前の練習試合で死球を受けて右手骨折。悩んだ末にチーム帯同を決断したが、一塁コーチャなどのサポート役に終わっていた。

大学ジャパンでの2着のユニホームは今も実家で保管。今大会の背番号には4年時と同じ23番を選んだ。「その番号でもう1回出たいなと思った」。当時は「空いていたから」と選んだ番号に深い意味を込めた。

侍初安打が決勝弾。9回にも右前打でマルチ安打を決めた。「ここで終わったら意味がない。最後までしっかりやり切りたい」。気を緩めず、次戦に向かう。【波部俊之介】

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