日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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何年か前だから、監督になる話題などまったくなかった頃、新庄剛志に「もし監督になったら誰をコーチを呼びますか?」と尋ねたことがある。

「ちゃんと準備してるんですよ。マサハル(福山雅治)に一塁コーチをお願いして、アツシ(EXILE Atsushi)に三塁コーチに立ってもらおうと思ってるんです」

中堅手としての守備力は阪神の球団史上NO・1だろう。現役時代には甲子園のバックスクリーンを見渡しながら「僕、あのてっぺんまで登っていける気がするんですよ」と真顔で言われた。

スパイダーマン? それだけ自信があったのだろう。とにかくこの人としゃべっていて、こちらがイマジネーションする“答え”が返ってきた試しがない。

だが、本当に日本ハムで監督になってしまった。そして、今シーズンは2年連続最下位の屈辱を力に変えた戦いぶりで注目を集めている。

交流戦は阪神に連勝スタート。古巣との一戦を前に「岡田さんに記念撮影をお願いしたら『写真だけやぞ!』って言われました」と笑っていた。

そのカード初戦は、先発伊藤大海が5回2失点で勝った。だが、とても好投とはいえない内容で、ゲーム後のハイタッチも晴れ晴れした表情ではなかった。

すると後ろからさっと歩み寄った新庄が、伊藤の両肩をモミモミ…。何かをささやきながら、気を使っているんだなと思いながら見ていた。

監督初年度は「何も分かりませんでした。味方がどういう状況なのか、ピッチャーのことも分からない。継投のコツなんてまったくつかめずに終わってしまった」と打ち明ける。

場数を踏んで、批判にもさらされた。組織を束ねるリーダー、監督として大きく成長した。FAに何十億円も投資し、長期契約する大型補強に依存しないチーム作りはファンに好感を持たれている。

チームに徹底しているのは「準備」だという。打席に入るまでに狙い球を定めるのに集中し、守備では飛んでくる打球をイメージ。走者になったら打球判断を想定しながらプレーする。

「例えば『明日スタメンあるからね』って一言いうだけで試合に備えができますからね。走者が二塁にいったら、こちらがサインを出さなくても、好きに打てばいいといっても、自分で考えて走者を進める打撃をするようになりました」

監督3年目の自身の進化を象徴するのは「今年は自分で継投をやるようになりました。全部自分でやっています」と明かした継投術にあるのかもしれない。

しかも、6回を投げて3失点以内だったらヨシとするとか、100球がメドだとか、代える側に立った一般論は当てはまらない。

「よくいう球数、イニングとか、100球で交代とかの意識は、僕にはないです。何が勝つためにベストか。チームが勝つための継投をすることを心がけているつもりです」

“石の上にも3年”という。スター不在で若手主体のチームを、スター監督がけん引し、V字回復の一途をたどっている。

「ここからチームがどう転がっていくのか。苦しい時もあるだろうけど、負けた時に選手がシュンとなってしまうのか、ならないのか。3点取られても、1点、1点、2点と取っていきたい。1つ1つですよ」

新庄は「僕にとって甲子園はこれが最後かもしれませんから」とショートの守備位置でトンボをかけ続けた。阪神に連勝し、DeNAに負け越し。育てながら勝つ“新庄流”が交流戦を盛り立て、パ・リーグに泡を吹かせるかもしれない。(敬称略)