雨中にこだまする岐阜の観客のどよめきが、「神」の一撃の目撃者となった歓声に変わった。4回1死満塁、ヤクルト村上宗隆内野手(25)が第3打席に立った。直前、雨脚が強くなり、7分間の雨天中断があったばかり。びしょぬれのスタンドのファンは「村神降臨」の応援旗を掲げた。

巨人泉の投じた2球目、108キロの縦スライダーを鋭くたたいた。一直線に芝生の右翼席へと飛び込んでいく。22年6月23日中日戦以来、8本目の今季17号満塁弾。初回にも2死三塁で巨人先発又木の外角高めへの143キロ直球を左中間席へ運ぶ16号2ランを放っていた。この2本で、直近6試合で7発目と絶好調ぶりが際立つ。

巨人主催による岐阜での開催。昨年は岡本和真が本塁打をかっ飛ばした。この日、地元タクシーのベテラン運転手の80歳男性は言った。「長良川球場は、本塁打が出ない事で有名なんですよ」。長良川からの風が常に本塁向きに吹き、逆風となるという。「それでも岡本は打った。ほんとにすごかった」。1年たった今でも興奮して振り返った。

実際、本塁打が出にくいデータはないが、この言葉に地方開催の意義が詰まる。この満塁弾は、「ぎふしん長良川球場」でのプロ野球通算100号のメモリアルな1本にもなった。希代の大砲の一発を見たことは、1年後も語り草だ。村上が描いたアーチも来年、同じように語られるだろう。

来季は大リーグ挑戦を明言し、岐阜で「村神様」の雄姿は見納めかも知れない。だからこそ、価値ある本塁打。けがの影響もあり、今季の出場は34試合目。「タイミングがうまく取れるようになってきた」と手応え十分に、残る日本での日々で、語り草な瞬間を作っていく。【阿部健吾】

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