先輩のためにも-。阪神のドラフト5位藤川俊介外野手(22=近大)が16日、日本ハムとの練習試合(名護)で初めてスタメン出場する。15日は沖縄・宜野座キャンプ休日だったが返上で練習。近大時代の2学年先輩で、5日に急死したオリックス小瀬浩之外野手(享年24)への思いを初めて公の場で語った。小瀬さんの「自分で目標を立ててやっていくのが大事」という助言を胸に「開幕1軍」へアピールする。

 「開幕1軍」を目標にする藤川俊には格好の舞台が用意された。日本ハムの先発は武田勝。昨季は10勝をマークした一流左腕を打ち込めば、アピール材料としては申し分ない。さらに開幕1軍にこだわる理由がある。

 近大で2学年先輩だった小瀬さんが、5日にキャンプ地の宿舎で転落死した。当日は広報を通じ「ショックすぎて、コメントできません…」と発するのが精いっぱいだった。訃報から10日が経ち、初めて重たい口を開いた。「悲しいというのはあるけど、引きずっていてもダメなので…」。うつむきながら、先輩との思い出が頭の中を駆けめぐった。

 昨年、プロ入りが決定した後も母校近大で自主トレを行う先輩の姿を目の当たりにしていた。藤川俊の阪神での背番号「7」は学生時代から愛着ある番号だ。その番号を藤川俊の前に近大で背負っていたのが小瀬さんだった。ポジションも同じ。食事をともにした際には、プロとしての心得も授かった。「入れ込みすぎず、自分で目標を立ててやっていくのが大事」。背中を追いかけていた先輩がアドバイスをくれた。

 キャンプでは日々学んでいる。「金本さんや、新井さんは下がどっしりしていて、ぶれてなかった」。打撃フォームは重心を下げる意識を始めた。ポスト赤星候補として期待されていた柴田は右手甲の骨折でリタイアした。マートンも実力を出し切っていない。藤川俊の開幕1軍も、いよいよ現実味を帯びてきた。

 13日の日本ハム戦では6回から途中出場し、バットでは右飛に終わった。16日は先発出場で、暴れ回るチャンスは増える。この日は室内練習場でフリー打撃などを実施。「1年間活躍して、成績を残してから報告に行くことが恩返しです」。小瀬さんの墓前で手を合わす時のためにも、まずは目標を達成しなければならない。

 [2010年2月16日11時7分

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