<阪神4-3巨人>◇30日◇甲子園

 阪神が桧山進次郎外野手(40)の激走で劇的サヨナラG倒だ。3-3同点の9回裏1死から中堅フェンス直撃の一打を放った。あと1歩で本塁打の当たりだったが、40歳の大ベテランは三塁に必死の形相で走り込み、大チャンスをおぜん立て。満塁から最後は鳥谷が自身4年ぶりのサヨナラ打を放ち勝負を決めた。チーム今季2度目のサヨナラ勝ちで3連勝、貯金は5。首位巨人には2ゲーム差。この勢いでG倒3連勝、奪首と行きまっせ!

 やっぱりこの男にはお立ち台がよく似合う。桧山が今年初めてスポットライトを浴びた。「この場所に立って声援を受けるのは久しぶりな気がしますね」。照れ笑いの神様を、この日1番の大歓声が包んだ。完全復活を果たした背番号24が、サヨナラG倒の主役だ。

 同点の9回1死での代打。越智の140キロ真っすぐをシバき上げた。中堅後方に伸びた打球は、あと数十センチで劇的弾。フェンスではね返ると、迷わず二塁も蹴った。今年41歳の男の大激走。猛烈なスライディングで間一髪、三塁を陥れた。

 「外野手の動きを見て行けると判断した。紙一重やったね」。二塁と三塁では相手に与える重圧は大違い。「最後は鳥谷がおいしい所を持っていきましたけど」。焼きモチの中に、今までにない充実感があった。

 「開幕からチームに貢献できてない気持ちが大きかった。イマイチ状態も上がってこなかったし、自分の中にもストレスがあった」

 プロ19年目の開幕は代打に代打矢野を告げられて始まった。神様となってからは、初めての体験だった。悔しさは打席で晴らすしかないと発起したが、気合は空回り。8打席連続無安打など逆に泥沼にハマった。

 だが心は折れていなかった。甲子園だけでなく、遠征先でも室内で人知れず特打に励んだ。打席でもオープン気味に構えるなど工夫し、懸命に出口を探した。やっぱり神様は神様を見ていた。ここ4戦で3安打の神様降臨ぶり。しかもヒットを打った4試合は全勝と“不敗神話”までできた。

 「ファンの人が後押ししてくれた。みんなはよ良くなれと思ってただろうし」

 吉兆もあった。東京から大阪に移動した午前の新幹線。ふと車窓を見ると快晴の青空をバックに、雄大な富士山がくっきり見えた。

 「実は新幹線から富士山が見えるなんて知らなかったんです。今まであの区間は本を読んでるか寝てるかで…。それも頂上に雪を被った山が裾野まではっきり見えて。ホンマ、めっちゃきれいで感動しましたよ」

 20年近く何度往復しても気付かなかったのに、この日、うれしい発見があった。それも縁起物の富士の山。思わず写メでパチリ。自身のブログもすぐ更新し「富士山にパワーをもらって今日もがんばります!」と臨んだ伝統の一戦だった。

 「シビれる試合を勝てた。チーム力をアップさせるのはもってこいの試合。向こうも調子いいけど、何とか食らいついていきたい」。

 最後はベテランらしい言葉で2差に迫った首位巨人追撃を誓った。今季16勝中、逆転ははや10度目で3連勝、貯金は5。そのバックには金本、矢野と並ぶもう1人の神様がいる。

 [2010年5月1日11時15分

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