<広島11-12巨人>◇29日◇マツダスタジアム

 右翼へ広島梵の打球が上がった。9回2死。土壇場でクルーンが2ランを打たれ、1点差に詰め寄られていた。代わったマイケルが一、二塁とし、抜ければサヨナラ負けの悪夢。だが、最後は長野が、がっちり両手でボールを収めた。4時間半近い死闘の幕が閉じ、巨人が連敗を2で、ロードでの連敗も8で止めた。

 両軍とも2ケタ安打2ケタ得点。ノーガードの打ち合いに勝った原辰徳監督(52)は、さまざまな思いをグッと飲み込んだ。勝利会見の中継カメラに向かうと、「12-11でジャイアンツが勝ったということ。他に何もありません。細かいことを言い出したら止まりません」と一気にまくしたてた。最後は、「以上!」と自ら会見を打ち切った。

 どんな大敗でも丁寧に質問に応じてきた。まして、勝ちゲーム。珍しい光景だった。それだけ死力を尽くした証しであり、また「言い出したら止まらなくなる」ほど、いろいろなことが起こりすぎた。点の取り合いを制すべく、攻めの継投で臨んだ。5回途中から早々と久保、山口、越智と中継ぎ3本柱を惜しみなくつぎ込んだ。今季初めて8回頭からクルーンを起用し、最後の2イニングを託そうとした。指揮官の執念に前夜はつながらなかった打線が応え、2度も4点リードを奪った。だが、3度にわたり1点差まで詰め寄られる苦しい展開だった。

 1分あまりで会見を打ち切る直前、原監督は「本来なら2つ取っておかなきゃいけない」と漏らした。これが本音ではないか。阪神、中日に2カード連続勝ち越し広島に乗り込んだが、3連戦初戦にまさかの延長サヨナラ負け。勝てた試合を落とし、そこから連敗した。この日も負けて3連敗なら、最悪の流れのまま好調ヤクルトとの連戦が待っていた。首位阪神をゲーム差なしでピタリ追走。何よりも、勝利という結果が大きかった。【古川真弥】

 [2010年8月30日13時26分

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