<阪神5-2ヤクルト>◇7日◇京セラドーム大阪

 しびれた~。阪神が執念の7人継投でヤクルトを振り切り、3タテを食らわせた。貯金1は4月23日以来。先発鶴が2回途中で降板したものの、ここから救援陣が踏ん張った。圧巻は、5番手小嶋達也投手(25)だ。3点リードの6回無死満塁を切り抜け、勝利をグイッとたぐり寄せた。首位ヤクルトにはついに5ゲーム差と接近。この勢いなら…いける!

 絶体絶命のピンチで、左腕が目覚めた。3点リードの6回表無死満塁。この日5人目の投手に指名されたのは、小嶋だった。塁上がすべて埋まり、誰もが逃げ出したくなる状況だ。しかも右の代打宮本に対し、3球続けてボール。「焦りました。押し出しになるなら、開き直っていこうと思った」。

 追い込まれて、本当の力が出る人間もいる。左腕がそうだった。ひとつストライクを取ると、吹っ切れた。遊飛に打ち取ると、続く川島慶は得意のスライダーで空振り三振。腕が振れた。そして青木は遊ゴロに封じた。スピードガン表示は140キロ台前半だが、球威があった。「イニングの頭から準備はできていた。気持ちを上げていった」。会心の16球で、スコアボードに「0」をともらせた。

 執念のリレーだった。2回表2死満塁で鶴が降板。真弓監督は「いつもより、コントロールが悪かったので、早めに代えた」と振り返る。ここで覚悟を決めた。まずは2番手に渡辺を起用。3番畠山から三振を奪った。「1人抑えたらどうにかなる」。緊急登板に強い右腕が3回も無安打に抑え、流れを断ち切った。9回の藤川まで、6人のリリーフ陣が1度も本塁を踏ませなかった。

 どれだけ投手陣をつぎ込んでも、勝ちたかった試合だ。4月23日を最後に、勝率5割で迎えた試合は6連敗。さらに同一カード3連勝の達成も苦しんでいた。6度のチャンスで1勝5敗。「連勝していたから、いい試合をしようと思った。3戦目は難しい。今日もどっちに点が入ってもおかしくなかった」と指揮官は言う。そんな嫌なジンクスを破った。

 小嶋の覚醒で手にしたものは大きい。7月30日の横浜戦。2点リードでロングリリーフに起用したが、4イニング目にスレッジに満塁弾を打たれた。真弓監督も「引っ張りすぎた」と継投ミスを認めた。榎田不在で乗り切れないチーム状態を表していた。似た状況で、小嶋がリベンジに成功。7回も3人で抑え、真弓監督を喜ばせた。「前から評価は上がっていたが、一段と上がった。今日の勝因だ」。一枚足りなかった勝利の方程式に、左腕が加わった。

 4月23日以来の貯金「1」。首位とのゲーム差は5に縮まった。再び週末に敵地でヤクルトと3連戦が待っている。対戦成績を6勝2敗とし、苦手意識も植えつけた。逆転優勝を信じたくなる価値ある勝利だった。【田口真一郎】