<楽天1-0日本ハム>◇26日◇Kスタ宮城

 マー君、待ってました!!

 楽天田中将大投手(23)が、初の延長完封勝利で7月13日以来となる7勝目を挙げた。0-0と打線の援護のないまま延長10回まで投げ抜くと、その裏にルーキー岡島の三塁内野安打で2試合連続のサヨナラ勝ち。エースが6試合ぶりに勝ち、チームは2カード連続の勝ち越し。首位西武に5・5ゲーム差とし、再び混パに割り込んでいく。

 久しぶりで、田中は出遅れてしまった。0-0の延長10回裏。1死一、二塁になると、ベンチ前でキャッチボールを始めた。「(サヨナラで)勝つに越したことはないけど、次のイニングを考えて」。初めて経験する11回に備えた。2死二、三塁で岡島がサヨナラ内野安打を放つ。「あ、サヨナラだ」と思っているうちに、歓喜の輪ができていた。遅れて二塁方向へ。人混みの先、やっと岡島とハイタッチできた。

 試合前から気持ちを高めた。練習中、救援陣に「最後まで投げます」と宣言し、マウンドでは「テンポよく」を心掛けた。1回、田中、村田と難しいゴロが続いても、野手が好捕連発。「際どい打球をアウトにしてくれた」と感謝したが、散発3安打で今季初めての無四球完封。守る時間は短く、リズムを生んだ。

 お立ち台で「みなさん、お久しぶりです。長い間、ふがいない投球でチームに勝ちをもたらすことができませんでした」と頭を下げると、後は人懐っこい笑顔だった。だが、ベンチ裏。報道陣からの質問が一段落すると、自ら口を開いた。

 田中

 今日、良くても肯定的な記事は書かないで下さい。来週を見て下さい。

 44日ぶりに勝った解放感に浸るのは、やめた。モヤモヤも過去といわんばかりだったが、この1週間は特に違った。通常は登板2日前だけのブルペン投球を、4日前、2日前と2回に増やした。19日西武戦で6回途中6失点KOされて微調整。意図を問われても「ノーコメントです。いろいろ、やらないと」とだけ。西武戦の話題も「前を向いているので」。前日25日は、練習後は立ち止まらずにクラブハウスへ消えた。

 質問に真摯(しんし)に答えるだけに、珍しかった。それだけ集中し、この日にかけていた。つかんだ1勝は成長の裏返しでもある。プロ2年目の08年も、翌09年も、7試合続けて勝てない時があった。「あの経験があったから」今回も「我慢、我慢と言い聞かせてやれた」。コンディショニング担当の星コーチは「今では考えられませんが、当時は味方のエラーで負けると表情に出ていましたね」と振り返る。

 登板を2日後に控えた夜「頑張るのは、みんな頑張るんです。結果を出すしかありません」と漏らし、結果を出したこの日は「自分は23歳。まだ若い。何も極めていません。まだまだ上にいかないと。(勝てない時期は)あって当然」と締めた。星野監督は「安心しちゃいかんが、去年の田中が戻ってきた」。1週間後、本当に安心させればいい。【古川真弥】

 ▼田中が延長10回を投げ、自身初の1-0完封勝ち。田中は10年3月28日西武戦で延長10回を投げ1失点の完投勝利を記録しているが、延長戦の完封勝ちは初めてだ。延長戦の完封勝ちは09年5月15日吉見(中日)以来で、楽天の投手では初めて。この日は与四死球が0。09年に延長完封した吉見も与四死球0だったが、パ・リーグでは71年6月24日高橋直(東映)が近鉄戦で記録して以来、41年ぶりだった。