<楽天4-1日本ハム>◇1日◇Kスタ宮城

 難敵マー君攻略ならず。日本ハムは楽天に逆転負けした。4番中田翔内野手(24)が1回に先制適時打。先発吉川光夫投手(25)は5回まで1失点の好投も6回に逆転され、楽天田中との同期対決に敗れた。栗山英樹監督(52)にとって、ヤクルト時代の恩師、内藤博文さん(享年82)が4月29日に急逝し特別な思いで臨んだ試合だったが、11年から続く対田中の連敗は7になり、5位に転落した。

 最強の天敵を前に、弔い星を挙げることはできなかった。日本ハム栗山監督は「勝ちたかったねぇ…」と一言残し、凍える寒空の中、球場を後にした。

 滑り出しは上々だった。4番として固定した中田が先制適時打を放ち、リーグを代表する左腕へと導いた吉川が5回まで1失点の好投。監督1年目の昨季、信念を持って起用を続けた2人を軸に、中盤までは白熱の競り合いを演じた。

 暗転したのは6回だ。失策絡みで勝ち越しの1点を許すと、1死満塁から、遊撃の名手・大引までもがゴロを弾き、これが2点タイムリーエラーに。間断なく冷たい雨が降り注ぐ悪条件の中、守備の乱れから背負った3点のビハインドは、あまりにも大きかった。「考えられないミス。正面の打球だし、悔しいです。チームにも、吉川にも申し訳ない」と反省の弁を並べた大引だったが、栗山監督は「ミスはあったけど、もっと点を取れていれば、あの守備位置にもならなかった。今日に関しては監督が悪い」と、誰も選手を責めることはなかった。

 1人ひそかに、左肩に喪章を付けて臨んだ一戦だった。4月29日、栗山監督がプロ入りした際、ヤクルトの2軍監督だった内藤博文さんが心不全で死去した。「あの人がいなければ、今の俺はなかった。野球観、生き方、すべてが俺のベースになっている」と慕った恩師の死。今年1月に会食した時には、体調が優れないにもかかわらず、突然、ほうきを手に取って身ぶり手ぶりで打撃論を語ってくれた。訃報に接しても「野球に集中しろって怒られる」と、駆けつけたい思いをぐっとこらえ、戦いの場にとどまった。

 楽天田中に11年から7連敗となったが、下を向いている暇はない。「今日だけじゃなく、毎試合、頑張ることが弔いになる」と話していた栗山監督。心はもう、前だけを見ている。【中島宙恵】