<全日本大学野球選手権:創価大3-0道都大>◇13日◇2回戦◇神宮

 和製ライアンだ。創価大(東京新大学)の小川泰弘投手(4年=成章)が道都大(札幌学生)を3安打無四球完封。171センチと小柄ながら大リーグの速球王ノーラン・ライアンばりの豪快投法で11三振を奪った。

 小川は171センチの体を、背番号18が打者から見えるほどにひねる。同時に左足を高々と上げ、右足に体重を乗せると一気に投げ込む。最速143キロ。9回、最後の打者はフォークで仕留め4者連続三振で締めた。被安打3、先発全員から11奪三振。「集中を切らさず、1球1球投げました」と113球を振り返った。

 昨年は東京新大学リーグで東京国際大に敗れ、この大会に出場できなかった。「絶対的な球がないんで、何か変えないと」。そう思って取り組んだのがフォームの改造だった。参考書はメジャー324勝のノーラン・ライアンが書いた「ピッチャーズ・バイブル」。同投手が投げる動画も繰り返し見て、フォームをつくりあげた。

 効果は今春のリーグに表れた。7勝無敗、防御率0・76。東京学芸大戦ではノーヒットノーランを達成した。小川は「リリースポイントが高くなって打者から見えにくくなった。体重が軸足に乗って腕がよく振れる。力を抜いて、出所を隠して投げるんです」と説明した。下半身に負担がかかるが、その分は走り込みを増やしてきた。

 ネット裏に集結したスカウトの1人は匿名を希望してこう話した。「3位以内に挙がる選手です。球に力があるし今日もよかった。変化球も多い。体は関係ないですよ」と話した。変化球はスライダー、カーブ、カットボール、フォーク、チェンジアップと多彩だ。

 小川もプロを志望する。「大学日本一になって、将来はプロで一流の選手になりたい」。大学日本一にはあと3勝が必要だ。「(全試合登板の)覚悟はできています。ゼロに抑えれば負けない。目の前の相手をぶっ倒すつもりで投げていきます」。目指す「一流の選手」に向け、小さな右腕がダイナミックに踏み出した。【米谷輝昭】

 ◆小川泰弘(おがわ・やすひろ)1990年(平2)5月16日、愛知・田原市生まれ。小学3年で野球を始め、赤羽中では軟式。成章高(愛知)では3年春に21世紀枠でセンバツ出場。リーグ戦通算30勝3敗、18完封。自己最速は147キロ。171センチ、79キロ。右投げ右打ち。好きな投手はダルビッシュ(レンジャーズ)と和田(オリオールズ)。

 ◆ノーラン・ライアン

 1947年1月31日、米テキサス州生まれ。65年ドラフト12巡目でメッツ入りし66年に初昇格。エンゼルスに移籍した72年以降の8年で7度の奪三振王に輝くなど、通算5714奪三振は2位ジョンソン(元ジャイアンツ)を800個以上引き離す。7度のノーヒットノーランも歴代最多。通算324勝292敗、防御率3・19。99年に歴代2位の得票率98・79%を集めて殿堂入り。現役時代のサイズは188センチ、77キロ。10年に共同オーナーの1人でレンジャーズ買収に尽力し、現在はレ軍の最高経営責任者(CEO)と球団社長を兼務する。