数日前のこと。首都圏に住む86歳のおじから電話がかかってきた。

「悪いけど、うちに来てくれないか。ネットに入らないと、WBC見れないんだろ」

“ネット”とは、Netflix(ネットフリックス)のことだろう。聞けば、今回のためにテレビを新調。ボタン1つでNetflixのページに飛ぶスマートテレビにしたらしい。

翌日、仕事を早めに切り上げ、東京・築地の会社から電車を乗り継いだ。おじはおばと二人暮らし。子どもはいない。「悪いなあ。わざわざ。近所の人に頼もうと思ったんだけど」。Netflixに何度か加入を試みるも、うまくいかなかったそうだ。

おばがタブレットを使うため、Wi-Fi環境は整っている。ただ、おじは今なおガラケー派。スマホは、おそらく使ったことがない。幸い、おばがスマホなので、Netflixへの加入自体はスムーズにいった。

おじにテレビのリモコンを持ってもらい、実際にホーム画面から開幕したばかりのWBCの試合(チェコVSオーストラリア)のページまでたどりつけるか、やってもらった。さらに、検索ボタンを説明。映画が大量にあることにびっくりしていた。

一通り説明し「日本戦は明日の夜7時からですよ」と念押し。これで大丈夫だろうと思ったら、思わぬ質問を受けた。

「番組表は、どこにあるんだ?」

あ、そっか。「配信」に初めて接すれば、当然そう思う。ケーブル放送とは違う、ネット回線を使った仕組みを説明したら、理解してくれた。

次の質問。「でも、番組表がないなら、日本の試合がいつあるか、どうやって知ればいい?」。

これには参った。「ネットで分かりますよ」と即答してしまったが、おじはネットをしない。取っている新聞は一般紙のみ。その日の紙面には、日本戦のスケジュールは載っていなかった。日刊スポーツには載ってるんだけど…。

「チェコ戦まで全部、夜7時。準々決勝からはアメリカだから、午前中になるけど。正確な時間は、また電話しますね」と、とりあえず答えるしかなかった。

86歳、ネットをしないおじのNetflix加入を手伝って分かったこと。スマホなし、ネットなし、の状態から、今回のWBC視聴に至るのはかなりハードルが高い。幸い、両方あったからクリアできたが、おじおばのような高齢な人たちにとって、加入手続きの壁は低くないと実感した。

それでも「見たい」と思わせるだけの魅力が、WBCや侍ジャパンにはあるのだなとも思った。日本の初戦、台湾戦は社内業務が入っており時間が取れなかった。ちゃんと観られたかな。韓国戦の試合前に電話してみよう。【古川真弥】