ボクシングの元WBO世界ミニマム王者・山中竜也(29)が現役を引退する。正確には2度目の引退。復帰後の初黒星を喫した直後に潮時がよぎったという。
山中は17年8月に世界王座を奪取した。しかし1年後の18年7月、2度目の防衛戦に敗れて王座から陥落した。試合後の検査で硬膜下血腫が認められ、ライセンスが自動的に失効となり、現役を引いた。
大阪市内の繁華街でおにぎり専門店「おにぎり竜」を開店。店主として繁盛に成功したが、ボクシングへの熱意が消えることはなかった。21年12月に日本ボクシングコミッション(JBC)が頭蓋内出血と診断された選手について、条件をクリアすればライセンス再発行を認めるとの規則改定を受けて現役に復帰した。
WBOアジアパシフィック・ライトフライ級王座を獲得し、世界2階級制覇を目指したが23年12月にジェイソン・バイソン(フィリピン)に2回TKO負け。その年のゴールデンウイーク明けに「引退」を心に決めた。
「燃え尽きました。(昨年6月の)試合前の練習中に次も心と体を作れるのかと思い始めて。燃え作ることができたんだなと思って引退しようと」
妹のIBF女子世界アトム級王者の菫(23)は、家族ラインに入ったメッセージを明かす。「燃え尽きた。もう辞めるわ」。菫は「いい終わり方だなと思います」と言った。
殴り合うボクシングという競技は最悪、命をも奪われてしまう危険性と隣り合わせにある。突き詰めればそのスリリングさが、見ている者をひきつける。その魅力にとらわれるのは観客だけでなく、リングに立つ選手も同じ。1度はリングから離れ、また戦いたい思いから戻ってくる選手も少なくない。そんな1人の山中は世界王者になり、復帰して最後まで戦い抜いた。
「(1度目の引退とは)全然違う。もやもやは全くない。めちゃくちゃスッキリしている。やりきった。もうやりたいとは思わないです」
言葉通り、まさしく燃え尽きたのだろう。「あのころはよかったではなく、あのころもよかったと思える人生をこれからも歩んでいきたい」。体にも支障なく終え、格闘家としては望むべき終幕。「おにぎり店の大将」として歩むこれからの人生の方が長い。久しく足を運んでいない店をまた訪れよう。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)


